サムライガールズ/刀語

百花繚乱 サムライガールズ・3話。十兵衛ちゃんの押しかけ状態は周囲に…主に千姫様に波紋を投げかけ、そこで負けずに押しかけ姫様な状況である。姫様って初登場時はえろドSキャラ的な風情だったんだけど、今は何だか学園モノのヘッポコツンデレお嬢様の枠に収まってきましたよ。いやこの作品も一応学園モノではあったっけ。学生どもと学園がそのまま国家の政治軍事に直結してるってのは変則的なセカイ系とも言えるかな。世界観の狭さとか個人が世界に影響を与え得る構造とかね。


十兵衛ちゃんの内部人格は、やはり邪悪に属するものではないらしい。「何かあるたびいちいちニヤつく」という、その強大なパワーはともかくどーも精神的修行はあんまし足りてないようなお人なんですが、こういうのほどのちのちイジられキャラに堕してしまうってのもアリネタなのでお気をつけ下さい。なるほど当世はかようなメシが流行っておるのか、とか言いつつハンバーガーにハマっちゃうとかね。


全体的に和風っぽい落ち着いたトーンの画面なんだけど、それでも各々のお嬢さんのいでたちは雰囲気を壊すことなく充分に華やかに見えるようになっている。色彩設計いろいろ考えたことやろなあ。あと千姫十兵衛ちゃんも、ちちも然りながら腰周りがけっこうなドッシリ加減のデザインになってんのもよろしい。…ただまあ、やっぱし通常時の十兵衛ちゃんのキャラはちょっと苦手やなあ。悠木碧さんの演技は上手いんだけどねえ。


刀語・10話。残す刀もあと僅か、まにわにさんも二人だけ、とまあ刀集めの旅もどうやら終盤にかかってきた状況である。そして今回の刀の持ち主は、どうやら七花ととがめ共々因縁ある場所、らしき処刑場にて待つ。その仙人・輪廻とは、いかなる人物か。という話。


輪廻さんは非常にとらえどころのないお人でして…いや、人というよりは「そういう現象」と言ってもよいくらいに純粋化しているな。相対した者にとって最も苦手な姿、性格となって出現するのである。此度彼(なのか彼女なのか)の相手をしていたのは主に七花さんの方であるが、おかげで七花さんは自分の記憶、敗北と後悔と逡巡の歴史と対面せざるを得なくなる。


この時とがめさんは、刀を得るためにこの処刑場…かつて故郷であった場所、をひたすら掘り進んでいる。穴を掘って下方に進む、それは同じく記憶と歴史を遡る事に他ならない。こうしてアプローチ方法は各々ながら、二人とものすごくストレートな「自己と自我の掘り下げ」を経験させられるワケでしてな。かなり変則的ではあるけれど、一種の回顧編/総集編っぽいお話と言えんこともない。


その結果獲得した今回の刀・銓とは、柄だけあって刀身の無い刀という…なんかそのう、料理マンガのパロディとして「窮極の料理とはそれに携わる人の心です」つって皿だけ出てくる、っちうアレのような、そんな無意味かつ意味深な代物である。これによってとがめさんが得た教訓は「勝つために勝たないことを選択する場合もありうること」、「得損ねた」教訓が「目的のためには目的を捨てることを選択する場合もありうること」。いかにもこの作品らしいヒネた物言いであるけれど、同時に先の展開をワクワクさせるような仕込みでもあるな。そしてこの刀集めの窮極的な存在が七花さんそのものであり、「完了形」の刀であると。なるへそ…刀身のない刀を経て「虚刀流」となるワケか。…毎度ながら凝った構成ではある。


輪廻とのバトルは一応あるものの、今回は基本的に内省と状況整理と一部の種明かし、という趣きのお話で、この段階における「タメ」ってのはいかにもラス前近しの雰囲気がある。とがめの父の仇が七花らしきこととか、四季崎の末裔が否定姫であることとか、そういう結構大きな伏線も「あ、クライマックスが近いのかな」って感じに寄与してますな。


やりようによってはダレ場にもなりそうな回なんだけど、輪廻のキャラとその演出が非常に特異かつ印象的なので、あんまし退屈な感じはしない。リクツっぽさが楽しさに繋がってるのは毎度の事だけど、奇妙な楽園のような「輪廻の世界」と、それが失われた後の荒涼たる処刑場の対比がよろしいね。何やら一炊の夢というかね。


てことで…そうか、もうじき終わりなんだなあこの作品も。感慨深いような、残念なような。さて。