マイ・ブラザーズ・キーパー

チャールズ・シェフィールドマイ・ブラザーズ・キーパー」読了。シェフィールドはマッカンドルー航宙記しか読んだことなかったので、この現代風な作品は割と新鮮。でもまあ、根っこにデカいSF的ワンアイデアがあって(マッカンドルーなら加速度相殺方法、今作ならビックリ脳手術)それにワチャワチャが乗っかってくる…ってとこは共通なのかもしれない。ま、二作読んだ程度では何のあてにもなりませんが。


スジとしては「事故に遭った双子を脳を含めて融合したので大騒動」という。一つの体に二つの頭、Mr.オセロマンって映画があるんですかね? いや全然違いますけどね。語り手であるピアニストの弟の方が、謎のエージェントだったらしき兄の記憶に少しずつ触れてゆく、その過程で巻き込まれる国際的な大アクションである。スパイものでもあるんだけど、その手の味付けとしてはやっぱ本家のストーリィテラーさんたちの作品には少し及ばないかな。ちと世界感が小さい。これはピアニスト視線の物語だから当然だ、とも言えるけれど。


弟が兄の謎を探るうち、巨大な陰謀にぶち当たる…というとこよりも、オクテの弟さんが行く先々で兄のレコに再会したり兄の手管がつい出たりしてモテモテる、という流れがなんかバカっぽくて良いな。おっそろしい敵の女幹部にまで手を出していた事が判明するシーンには笑ってしまった。すげえや兄さん。


後半は舞台がインドとなるが、そこで登場する薬物が「ニンフ」。幼女をセックス可能にするというやたらとインモラルな薬物で、それにインドの複雑な民族事情がからんでくる。主人公が「邪悪な薬」だと断定するそれを渇望せざるを得ない女性、それを強要させるその地の流儀。「男たちが変わればニンフはいらなくなります」。…うーん、この辺りの描き方はどうもサラッと流しすぎなような気がするな。これ、かなりデリケートなネタだと思うんだけどね。


謎の一部に電子機器会社があると睨んで情報収集する主人公に、インド側のキャラクタが「コンピュートでしたっけ、それを作っている会社です」と言うシーンがある。今となっては電子大国のイメージが強いインドですが、これが書かれた当時(1982年)はまだその途上だったのが判りますな。んで新興のメーカがどんどん出来つつあるという描写は、その後のインドの姿を予想させるとこではあります。


そこそこ楽しかったので今度は「ニムロデ狩り」を読んでみたいと思いました。