コヨーテ/桜蘭/カペタ/ハルヒ

●新番組・コヨーテ ラグタイムショー。事前情報はUFOTABLEってとこのみ。ここは未来の外遊星、ちょいと陽気なクライムノベル…てな風合い。今回はキャラ紹介というか、そうねえ、ボンド映画のアバンタイトルってとこですかな。


僻地の凶暴犯収容刑務所を舞台に、謎のテロリスト「ミスター」を巡っててんやわんやの大立ち回り。バカ食いデッドパンの美人捜査官、いささか頭のあったかい警察嬢ちゃん、十二人のブラッドサースティなロボ娘たち。ちょいと萌え要素に傾きはあるがしかし、ああ、濃厚なB級アクション映画の香り。それは「ミスター」の声で良く判る(大塚明夫)。ワシのイメージはカート・ラッセルだな、コイツ。


とにかく話運びが上手かった。満艦飾たる十二人の殺し屋姉妹のキャラ造型を、あっという間に平面的なヘボキャラにしてしまう「ミスター」がとってもステキジジイ。うーむ、ツカミとしてはあんまし文句はない第1話であった。…前作ユーフォーテーブルの「1話はいいんだけどねえ」なレッテルを粉砕してくれるものと期待しよう。


桜蘭高校ホスト部13話。番外編でルイス・キャロル世界のハルヒさん。止まった時計・水面に写る世界・光と影・未来を描く巨大な絵…と、いつにもましてウテナ的な、っつーか榎戸的な小道具が満載で、それを割と軽妙な味付けでまとめてあって面白かった。あと、長髪にして男声(突っ込まない)のアナザーハルヒも良い良い。


お話自体は、まあ、そんな感じ。ただ、夢の登場人物たる環やハニーの諸先輩たちが繰り返すメタ的な言辞のおかげで、妙な安心感のようなものがありましたね。「これは夢ですよ〜、番外編ですよ〜」というエクスキューズというか。照れ、ともとれるかな。


うん、良く動く楽しい絵でしたし、良い息抜き話でしたかな。あと気になったこと。「大きく」なったキリミちゃん、せくしぃバージョンの声も間宮くるみだったのか? 


カペタ40話。レースメニューは進んでゆく。カペタはなんとか喰らいついていけているようだ。一方のもなみラヴなシバリョウさんは、もなみさんが「シバなんかに負けるもんか!」とカペタに声援を送ってるのも知らずにカペタとニアミスしたりしなかったり。青春、ですなあ。


フォーミュラに移ってから、ちゃんと音もかっちょよくなってるのはいいですなあ。それもあまり繰り返しも感じられない、ってことは音源数も大量だってこと。こういうディテイルがリアリティを生みますねんな。あと、車をフォローしていく時のカメラブレ等も「それっぽく」処理してあるね。これ、今までもやってたのかな? 本日気づいたんだけど。


涼宮ハルヒの憂鬱最終話。チューエンド。なるほどこれが要石、最終話に持ってくるべき構成だな。やはり「ええと、この段階ではどういう人間関係だっけ?」と戸惑ったりはするのだが。


ハルヒの日常への倦みは、とうとう世界改変へと繋がってしまう。全てを無に。全てを新たに。そんな悪の帝王みたいな荒事を、まーったく理想も信念もなく無自覚にやってしまう。神人を見て「邪悪なものには見えない」と目を輝かすハルヒさん。こ、こりゃ恐ろしい。結局キョンのチューで有耶無耶に、「最後の手段は最手近なもの」という今様青い鳥物語であります。ま、セカイってんですか? ですか? 


「この話でシメ」という構成でちょっと感心したのは、一般的な物語の終わった後、「末永く幸せに」云々といった状況を視聴者が既に知っているってこと。ああ、あいつらは今後も色々やってくんだろうなあ…だってもう見たからね。未来の記憶ですな。


総評。上質、上等、非常に作りこまれ度が高い作品であった。話題性という面から見ても、膨大なレイヤーの仕掛けが実にとんでもない。再観賞に足る作品、だったのだろう(再見しないと把握不能、とも言えるが)。押井はアニメというジャンルの弱点として「絶対的な情報量の少なさ」を挙げていたが、それを回避するアプローチの一つのような気はする。


ただ、最後までワタシはこの作品の温度の低さに完全には乗っかりきれなかった。多分それはこの作品の欠点ではない。さっきも上げた押井作品は更に更に低温だったりするが、ワタシ大好きだしな。


つまり…あまりにカッチリ構築されすぎていたんで、ジャンル外たるワタシにとって少々入り込みづらかった感があると。甘さやスキがもっとあればそっからとっかかれたりもしたのかも知れんが、…とにかくどんなムチャをやっても「意図的なんだろうなあ」「ファンにはガッチリフィットなんだろうなあ」という無敵さが見えたのよね。当然これはこっちの勝手な思い込みであって残念。


ま、そんな個人的残念不具合はともかく、かなり精妙なバランスじゃないとぶっ壊れてしまいそうなディレクションを、ここまで統制したには敬服しましたよ。苦労したと思うよ。…あの単語の洪水見りゃよく判る。また続編があったら…やはり作る側は大変だろうが、見てみたいですね。張ったままの伏線もありそうだし(緒方賢一のネコとか)。