八妖伝

●バリー・ヒューガート「八妖伝」読了。李高と十牛のデコボコ探偵(というかほぼ英雄)物語、最終巻。今回は八妖…つまり、伝説の八体の妖怪との戦いを描く。その背後には思いもかけぬ真実が隠されてる…ってのは当然ですね。


今までと同じく、そんじょそこらのファンタジィとは一線を画す白髪三千丈式の「中華的バカノリ」は健在だし、割と簡単に人死にや拷問が出てくるのに、妙にあっけらかんとした後味もちゃんと楽しい。でも前巻までと比して、少々スケールが小さくてかつ湿っぽい話ではありましたな。


ま、悪人善人ともキャラ立ち度はすげえし、話はどこへ転がるか判らない(のに、すごく緻密に構成されてる)しで、あいかわらず没入度は高いんですがね。今回はまず件の八妖、「山海経」や「聊斎志異」にも出てくるモンスターも居るようで実にこわ楽しい。が、それ以上に途宿六(途はサンズイに余)がエエキャラだったな。


この宿六、希代の大悪人にして最低最悪の快楽殺人者。なのに何故か口を開くと、どこ産の羊はどう捌いたら旨いだの、何たら言う豪華料理はこう仕込むだの、高度な食道楽話題しか喋れない。おかげでちょいとした情報を聞き出すのにも3頁ほどかかる、という。…バカキャラだなあ。


この3巻目が最後ってのはいかにも寂しいでんな。もうちょっと彼らの活躍を見てみたかったが、どうも出版社が乗り気でなかったようで。残念なりねえ。