鳥姫伝

●バリー・ヒューガート「鳥姫伝」読了。魑魅魍魎や魔法呪法の乱舞する架空の「唐」。ある村の8〜13歳の子供のみが倒れるという奇病、それを癒さんとて李高と十牛の師弟(みたいの)が大冒険。二人は中国全土を駆け巡り、悪漢や亡霊、はては皇帝や神々まで登場してのてんやわんや、である。


解説に「内臓感覚としてのシノワズリ(中国趣味)」について述べられているが、まさにそんな感じの作品。人命はえらく軽いし、血やら死体やらもばんばか出てくる。それを土着的なコメディ感覚で語るのが「中華的」なんでしょうかな。


主役の李高と十牛は典型的なホームズ/ワトスンコンビで、特に李高の快刀乱麻ぶりはご都合主義とは言えかなり爽快。いちいち「姓は李、名は高。珠に瑕とはわしのことでしてな」と名乗るのが可笑しい。


一つ々々のエピソードはカオティックかつ説話的なんだけど、それらを貫く骨格はすんげえしっかりと計算されている。謎また謎の小クエスト連鎖、最終的にバチンと一っ所にまとまる構成…。えー、いいやもう、言っちゃえ。ドラクエだこれは。


ええ判ってますよ、正確には西洋のハイ・ファンタジー作品たちが真の元型だってのは。しかし、もうお亡くなりの人も含めて、主要登場人物がカーテンコールのごとくご挨拶するエンディングだ。その形式とも相俟って「ラーミアに乗って世界を回る勇者たち」のシーンそのまんま。…個人的には初代シレンを思い出しましたがね。


いや、ホンマ大サーヴィスのエンディングなのよ。普通なら「この程度でキレイに落としちゃえ」とかクールな事を考えるもんだが、痒いところをぼーりぼり掻いてくれるような大盤振る舞い。うーん、説話的・大衆的な泥臭さに良くマッチしてますな。


出てくるキャラたちのとんでもない濃さも楽しい、ウソ中国ファンタジーの佳品ですね。続編もついでに買ってるので続けて読もう。全三巻か…最終巻も見かけたら買いたいが…。