弱虫ペダル/蟲師

弱虫ペダル GRANDE ROAD・10話。待宮さんとの競り合いの最中、回想モードに入った荒北さんである。この辺の回想は第一期で先にやってたんでどうすんのかなと思ったが、上手いこと補完関係にある情報やらを盛り込んでてよろしい。つーかほぼ一話まるまる回想で終わってしまい、現状の自転車レースはその結果だけが提示された形ではありますが、おもろかったからまあいいや。

荒北さんが待宮さんを指して「自分に似ている」と評する理由は、そのギラギラとした攻撃性であろう。回想中の荒北さんも有り余るアグレッシブさを持っていたのだが、彼が一つ上のレイヤに上れたのは福富さんによって「力の方向性」を与えられたから、ってのがあるのだろう。なんで自転車やってんだと新開さんに言われて「証明してェんだよ俺がここに居るって事を!」と応える荒北さんであり、これはなんかいい台詞だなと思う。ただ力を発散しているだけではなんの存在理由にもならない。ではその力で何をする? 何を勝ち取る? …ま、いろいろあるが、そういうことだ。

そんなこんなで彼我の差を見せ付けられ、自身の中に敗北を見た待宮さん。最後の最後で「実はエエ人でした」とか「負けるときは潔いのでした」という要素を乗っけて後味を整えているのだが、正直この辺は最後までチンピラ悪い人でもそれはそれでよかったのだがな、って気もする。普段の人格はCパートみたいな要素があっても、ことレースとなると何でもゴリゴリやらかす人…っての、魅力的じゃありません? そうでもない? じゃいいです。でもやっぱり関智一の演技はちょっと過剰なまでにスゲかったので、結局それでいいです。うん。

蟲師 続章・16話。冒頭、彼方の遠雷に心惹かれている子供の絵、そのあと木に縛り付けられて落雷に遭う子供の絵、とまあなんかこう、かなり尋常ではない幕開けである。その後もどこか心ここにあらずな少年と、あまり子供に対する感情が見られない母親という、まさにカミナリ前の曇天みたいなストーリィが続き、なかなかにやりきれない。お母んが最初から望まぬ縁談で、妊娠しても「産みたくない」と言い、生まれた子供に愛情を持てず、結果折檻の対象として雷に遭わせてしまう…という、もうぐるんぐるんと黒いものがうずまいている状況で、その子が雷の中からこちらをじっと見ているあの光景を見りゃ、そら目からハイライトも消えるわな。

そういった澱のようなものを抱え、にっちもさっちも動けなくなった母親に、「何してる、あんたも来るんだ」と子供を救う手を求めるギンコさんがギンコさんだよね。しかしその時の「戻りなさい。死んでしまうかもしないのよ」という母親の言葉のなんと死に切った口調であることか。もういいや、子供と一緒に贖罪として死のうとすがる母親を突き飛ばし、最後の落雷を自分一人で受ける少年。生き残ってなんとかほどほどのビターエンドに収束したけど、ねえ。

上記、最後に落雷を受けるシーンは落ちてくる雷視点というなんかすげえアングルから少年をとらえた画面であり、そんな奇抜なレイアウトなのに少年の表情と目が今までにないくらいに意志と心にあふれているのも判るという…相変わらず凝りすぎる作品ではある。いやはや、にしても結構重っ苦しい話であって堪能しました。