残響のテロル/キャプテンアース/ジョジョ

●新番組・残響のテロル。ナインとトゥエルヴ(ツエルブ)、互いに数字で呼び合う施設出身の若きテロリストさんお二人。かたや明るい、かたや陰気な表情をずっと保持している彼らは、しかし目的のために一般人を大量殺人することを厭わないほどに…なんだろ、人間性を失っているのか覚悟を決めているのか、それともそんなことに拘泥しない(と感じている)ほどの大きな目標があるのか。そんな危険人物に関わってしまったいじめられっ子のお嬢さんと3人で、さてこれから物語はどちらへお進みでしょうか…ってとこで第1話シメ。現代の都市を舞台に落ち着いた演出で送る巨大犯罪、ってとこで何となく東のエデンとか思い出されるな。まそれはそれとして。

渡辺信一郎監督は今期ダンディもやってますけど、作風的にはかなり対照的ですなこれ。作画に中澤一登、音楽に菅野よう子と今まで一緒に仕事してきたお仲間さんとのタッグであり、相当に気合の入ったプロジェクトであるのは判る。実際すげえ丁寧な画面設計と的確な演出のおかげで、作品全体にカッチリとしたスキのなさが十全に横溢している。メインの三人のキャスティングは手堅いというよりもフレッシュさ、しかし演技力には充分なウェイトを置いてますよって感じでなかなかよろしな。ナインの石川界人さんってどっかで聞いた声やなと思ったらガルガンティアのレドさんか。なるへそね。

さて。作品のクォリティはこのとおり充分に高いが、ではお話はどういう感じかってとこやね。彼らの目的がどういうものであるかは当然まだ不明として、表出されている事件は明らかに「大人社会に抑圧された若者の大いなる反抗」という判りやすい文脈で読み取るべき、っつーか視聴者がそう感じて「いいね!」と思ってくれるように、今んとこは作ってある。ここで問題は、彼らを通して見る世界の風景は、もう擦り切れたおっさんであるワシのような人物のサイトとはあまり重ならないってとこだろうか。どっちかっつーと冒頭の「太陽を盗んだ男」っぽいシーンできりきり舞いさせられてる警備員とか、びしょぬれのツエルブさんを見て戸惑ってる先生とか、そっちの方に感情を移入してしまうんよな。ま、制作側はそんなもん百も承知のこったろうし、ワシがアニメ世界のメインターゲットから乖離してんのもよう判ってますけどね。

てことで、そうねえ。とりあえずこの先どうなるかは気になるトコではあるし、もうしばらく様子見てみよう。めんどくさくなりそうなら、うんまあ、そんなとこで。

キャプテン・アース・15話。出奔したハナさんは同じく逃げてきたセイレーンさんと束の間同道することになる。お互い流浪の身ながら思いつめたハナさんとそこそこお気楽なセイレーンさんの対比がよろしいが、でもセイレーンさんも遊星歯車装置の意識を取り戻したらあっちう間にヤな性格になるんだろうな…と思ったら割とその通りでした。ああ、ワシはあのぽやんとしたセイレーンさんが良かったのに良かったのに! でもまあ一方、モコさんが「この星は自分たちの自我に影響を及ぼしている」みたいなこと言うてたことも確かではある。それの典型がテッペイさんですし、ひょっとして翻意なり説得なりの余地はあったりもするのだろうか。さてね。

今回の話のヘソは後半、三か所六名による同時多発キス攻撃ですな。みなそれぞれキスにより「本当の自分」を得るというのが共通しているのだが、その内容の深度や虚実など、レベルの差異がクッキリと別れてて興味深い。いっちばんどうでもよさそうなのがクベ社長(中身パック)の「本当の自分」ですけどね。口調の小物っぽさといい異常な精神高揚ぶりといい、あーこれは場の擾乱役で最後救われないんだろーなーとか、そういう感想が出てきますわな。しかし社長、当初の得体の知れなさはどこへやら、ホンマに周囲に踊らされてただけの道化さんだったとはねえ。秘書の人に言い寄られたとき、物理的に彼我の間に「壁」を作ってしまってんのが判りやすいわな。

てことで、ハナさんがライブラスターを得てこれで三人目のロボパイロットのできあがりである。正直彼女がキャプテンを避けていた理由ってのがイマイチ感じられなくて、まァそらご本人の思い込みだからある程度しょうがないとは思うのだけど、この辺の自己否定ぶりには後々補足的なエピソードでもあるのかしらね。…あとロボはアカリさんだけやな。つーかこの魔法少女さんだったらその辺、テメエで何とでもしそうな雰囲気はあるんだけども。

ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース・14話。アバンにて承太郎の学生服のオーダーと家出少女さんの別離シーンを追加、原作の補完をキッチリと付けている。特に釘宮少女さんの追加話は盛り上がりもあり、原作で違和感のあった要素を短い時間で解消しててちと感心した。ラストでカメオ出演くらいしてもエエん違うか、ってくらいの良追加ではある。えーさて、本編はパキスタン入りのご一統、中ボス扱いとしてエエだろうな、というエンヤ婆登場の前編でありますが。

霧に包まれた不気味な町、住民は皆よそよそしくどこか異様な雰囲気を漂わせる…という、これまたホラー映画フレーバーがプンプンと香る一編ですな。これにオーバーテンションなエンヤ婆演技が乗っかってくることで独特の雰囲気になってて面白い。実際初登場時から「すっげえがんばってんなあ」と思ってた鈴木れい子はんのエンヤさんですけど、いやあもう、ヴェテランのこういうはっちゃけ演技は見てるだけで楽しいものだんな。ゲスい台詞の連打連打、まさかポコチンなんて単語までこなすとは思わなかった。プロやねえ。

エンヤ婆がジョジョ一行を案内する辺り、要所々々で杖をつく「カン!」というSEが入るのが良いアクセントになってる。こういう余裕のある演出ができるってのは、1部2部と比べて余裕のある3部の強みではあるな。ま、その余裕の分、次週のポルナレフ君の情けない災難も濃厚なことになりそうで、彼にとっては不運ではありましょうが。ワシら見てる側はとても楽しいのでよし。

ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース・15話、関西では二階建てでお送りします。さてVSジャスティス戦、その後編。引き続き今回もエンヤ婆役、鈴木れい子の実に楽しげな暴れ演技を賞玩する回である。「向こうに行きやがれ!」とか「脳みそズル出してやる! 背骨バキ折ってやる! タマキンブチ潰してやる!」の三連コンボとか、もう大概ヴェテランである鈴木おばはん大活躍であり楽しい。まあ鈴木さんもこういう悪いおばはん役はけっこうやってきたとは思いますが、ここまでハッチャケたキャラってのも少ないんじゃなかろか。

前半の雰囲気は引き続きホラー映画風、特に今回はゾンビモノやね。ぞろぞろとやってくる死者たちに暗い雰囲気に立てこもり、とその手のテイストが濃厚。ポルナレフがトイレに逃げ込んでから外の様子をうかがう辺りのサスペンスは定番のフォーマットでけっこうコワイ。…んだけど、一連のサスペンスのクライマックスが「ポルポルくんがムリヤリ便器なめさせられちゃう瀬戸際」というイヴェントであるのはジョジョらしいというか何というか。音楽も相まって最高に盛り上がるのがひどいよね。ねえポルポルくん。

承太郎が出張ってきてからの安心感は流石の主人公。霧のスタンドを丸ごと吸い込んで撃退するという、考えるまでもなく結構ムチャなオチになっても、まァQ太郎さんならしょうがないかなとか思ったりもしますわい。てことで今回も楽しうございました。さァ次回はラヴァーズのダン、ゲスい演技と断末魔を期待しておきましょう。