ヤマト/有頂天家族

●ヤマトは次週以降なんか体育番組やるらしく、その前に二階建てでスケジュールを調整するようである。てことで宇宙戦艦ヤマト2199・まず18話。ゲートのデータも得、ほなバラン星とやらに向かいまひょか…ちうてたらホンマにエライことになる話。前半の篠原による決死の単騎偵察任務、後半のヤマト一騎当万の敵中無双、とそれぞれが一話二話程度使ってもエエくらいの濃厚な内容であり、その上にゼーリックさんの大規模謀反とその決着まで乗っかってくるのでもうカロリーが高い高い。密集形態の隙を突いて一気に駆け抜け、返す刀で波動砲をバラン星にブチかましてその反動でゲートアウト…という、ガミラスからしたらもう通り魔みたいなヤリクチが気持ちよい。いいねえこれぞテレビマンガ。一万隻の真っ只中に突っ込んでゆくヤマトのシーンとか、見ながら「ホンマにやりやがった!」と思わず声に出てしまいそうでしたよ。

そして総統暗殺の顛末は、ゲッベルス…もといセレステラさんの事前諜報により暗殺回避、まんまと引っかかったのがゼーリックさんでしたよ、と。彼の「力こそパワー」な戦術志向は普段なら有効でもあろうが、さっさとゲート通過の置き土産にバラン星破壊、こそが狙いであったヤマトに対してはちと大雑把に過ぎたですかね。ここでゲールさんがキッチリと落とし前をつけてんのが興味深い。小役人にして小物的な男ではあるが、総統が生きていたと判明した時のすんげえ嬉しそうな様子を見るに忠誠心はホンマモンのようですな。密集体形を解消しようとしてたり、戦術眼についても案外マトモなのかもしれない。いや、比較対象がゼーリックさんだからなんとも言えませんけれども。

鹵獲したガミラス戦闘機、あのMe262みたいなヤツ、あれやっぱかっこいいなあ。有機的なラインと入り組んだディテイルが禍々しくも美しく、ワシにとって本作のガミラスっぽさの象徴の一つがこいつですわ。立体物欲しい。

●引き続き宇宙戦艦ヤマト2199・19話。ドメル、ヤマト討伐に赴くの巻。初代ヤマトの記憶はかなり薄れてんだけど、この七色星団の辺りはそこそこ記憶に引っかかってんだよな。何よりドメルの陣容、いろんな色した艦船がぞろっと並んでるというのがガキの頃のワシとして妙にワクワクした覚えがあってねえ。てことで(旧作の通りなら)ドメル最後の戦い、その大舞台開始ってとこですが…。

いやあ、これはまた。ガキの頃に劣らずワクワクさせられる。まず何でしょうね、あの七色星団の風景は。もうそのまんま荒れた海、波頭蹴立てて進むマジモンの海じゃないすか。そしてドリルミサイルも敵の艦船群も違わず登場すると。すげえなこの再現の気合。無論考えなしに旧作をなぞるのではなく、ドリルミサイルや瞬間転送装置の妥当な設定とか、あとヤマト側だとコスモクリーナ(みたいなもの)を直接持ってこないのは何故だとか、ほんと丁寧に違和感を潰しつつ…その上で「宇宙は海」という大法螺ですよ。惚れるわあ。ついでに「ユリーシャとそっくり」っちうギミックを生かし、雪さんが攫われるという展開になるのかな。

ゼーリックのおっさんのドタバタもあり、首都に残ってる兵力はジジイとガキばかりってのはWWIIドイツ終盤、まあその国民突撃隊のオマージュでしょうな。何やこいつら大丈夫か、と訝る上官に対していきなしお歌を歌いだして意気上がる、こっちの方はバルジ大作戦っすよね。あれはパンツァーリートだっけか。…つーか監督、ホントドイツ好きねえ。あとこの時のザルツ人潜入部隊が「442小隊」ってってましたが…検索してみると米国の日系人部隊なのか。また狙ってやがんなあ。

有頂天家族・5話。逃げの矢三郎、とうとう仇敵弁天様と金曜倶楽部につかまっちまうの巻。お縄となれば倶楽部で一芸をし、それがウケなければ狸鍋にされてしまう…というハラハラシチュはしかし、まあ味付け程度である。金曜倶楽部の面々の浮世離れした風情、さらにそこからも一線を画した弁天の複雑な個性が見せ場でございましょうかねえ。

…弁天様にとって狸とは、一体どのような存在なんだろう。彼らを食するを好み彼らより大きな力を持ち、しかしどこか彼らをうらやましがっている風情があるような気もする。好きなものを食べてしまいたい、だけど食べたら無くなってしまう、とくりまんじゅうを前にしたのび太のようなことを言ってメランコリィに耽る弁天様。様々な物事を手にしてしまっただけに、単純に面白く過ごすことができなくなってしまったのだろうか。だからこそ、内面外面に何をくっつけていようとも世を楽しく生きようとする矢三郎に執着しているのかもしれない。それらを纏めて言うならば「食べちゃいたいくらい大好き」となるんでしょうな。

あと今回は母ちゃんかわいい回であった。冒頭の矢三郎を気遣う母、回想にて怪我をして布袋様に介抱される母、いずれもかわいいことであります。お母んは金曜倶楽部に救われ、お父んは金曜倶楽部に食べられているというこの表裏な状況は皮肉ではあるが、こうなるとお父んの食べられ経緯が気になるところ。物語の根っこに関わる大きな事象なのか、あるいは逆に取るに足らぬ狸事案に過ぎないというスカシネタか。ま、先々の楽しみに。

金曜倶楽部と狸鍋には谷崎潤一郎が関わっていた、というなんかよう判らんネタも出てきたりしましたが、谷崎のことはよう知らんのでどうとも言えまへんな。ちうか今、谷崎と打とうとして「たぬいざき」とミスタイプしてしまったけれど、ひょっとしてこれが故に狸との関わりが…! ってなワケはないやろなあ。