花咲くいろは/カイジ

花咲くいろは・最終話。ぼんぼり祭りを経て、喜翠荘はその生涯を終える。各々のキモチを抱え受け取り、再会を期して人は去る。てことで大団円、あんなけゴチャゴチャと転がっていた要素が何だかスッキリと片がついてしまった。オハナさんとコウちゃんの恋、女将と従業員の対立、喜翠荘の行く末。なんか知らんうちに投げ技を決められた感じですわ。


一旦こうと決まってしまえば覚悟を決めざるを得ないとは言え、誰も居なくなった旅館内を在りし日の幻影を伴って歩む女将の姿はやはり切ない。…うん、ワシ、こういう「かつてそこに在った日常の痕跡」っつーモノに弱いのよね。何でしょう、それが不可逆なものでありもうどうしても取り戻せないからだろうか。


しかしそれでも、女将はデキの悪い新米仲居…オハナさんを送り出して「待ってるよ」と言い、豆ジイは車の中から「またね、スイちゃん」と言う。いつかもう一度会えること、共に働けることに悲観していない。全く同じものは取り戻せないかもしれないが、同じくらい価値のあるコトはあるかもしれない。…多分、今までがそうだったのだろうね、彼らにとっては。


女将の「待ってるよ」のシーン、2クール通じてのシメ役というよりは…何かこう、まるで全編通してのヒロインのような渾身の作画(と、多分修正)でした。まさに、この絵がお話のヘソでもありましょうか。…あと、コウちゃんに関してですが、あの東京のメガネお嬢さんはどうなったのか気になる。こういうとこを「まァテメエで何とかしよるやろ」と突き放しちゃうのは…シリーズ構成の岡田さんの資質ですかなあ。強いやねえ。


●総評。温泉旅館に破天荒娘が転がり込んで仲居として働く、という昼ドラ的な設定でお送りする物語。主要キャラ周りがかなり若目のお嬢さんたちであり、またキャラデザ原案がメルさんだってのが深夜アニメっぽい要素ではあるが、恋愛だとかハーレムっ気とかの要素に薄く、基本「主人公のオハナさんが無茶をして場を引っ掻き回す」ってのが毎度の要素として発生するという。…うん、話の作り方は確かに連続ドラマっぽい。


とにかくオハナさんのキャラがなかなかに個性的で、悪気は無くて一本気で行動的だけどことごとく未熟、考える前に動いちゃうので周囲どころか視聴者まで「いやそれはちょっと」と思ってしまうような行動も多々ある、というね。それだけのガチンコなパワーのおかげで旅館のみんなも影響を受けてはいくのだけれど、判りやすく見違えました! ってな、ちょいとキモチワルイ啓蒙作品のような方向性ではないのは好み。皆さん相変わらずキャラクタ上の欠点は欠点として持ち続けているんすよね。


そ、毎度々々、お話の構造に「判りやすい結末」というか、困ったことがあってふとひらめいたワンアイデアで一挙解決! ってのが少ない(たまには和装エプロンで大人気とかもありますが)。この、様々な要素を持ち越し抱えたまま経験と時間が進んでゆく、っちう感覚は、無いとはいわないがここしばらくのアニメ作品ではあまり見当たらない要素である。ワシあんまり実写ドラマとか見ないけど、そっちの畑にはよくあったりするんだろうね、こういうノリ。理詰めでスパンと構築するという方向性ではない、こういう作劇アプローチはワシの想像範囲の外側にあるので、視聴していて興味深い。そのノリ自体が自分に合わなかった場合は面白くもないだろうが、この作品に関しては幸いなことにそうならなかった感じ。よきかな。


オハナさんは上記のごとく「コミュニティ外部からの異物としてのインパクト」としてのキャラ性を持っているので、開始しばらく…いやお話の後期になっても、ワシにとって「いやお嬢さんそれはどーかなー」性を持ち続けていた。それだけだと単に見づらくなるだけだろうが、この舞台にはちゃんとそのカウンターとなる要素がある。他のキャラたち各々の個性がそれであり、その中にあっても女将とお母んの両女性がその筆頭。あーやっぱ血筋なんだろうなというキャラのデカさですな。それぞれに強力で、それぞれに「いやそれはどーなのよ」性を持つというね。んでオハナさんは彼女たちにちゃんとぶつかってって、ちゃんと玉砕したりもする。この辺のキャラクタの動かし方は、各々のキャラの強さもあってとてもダイナミックであった。


個々の話をみればちょっとダルな所やアンバランスがあり、また一部「そんな話でエエの?」ってとこもあるんだけど、総体として一つのアジになってるのはよろしかった。2クールというバルクもこの作品の味わいに貢献してるとこではあろうな。てことで、楽しませていただいた作品でした。…でもワシ、最後まで「ホビロン」とか「ぼんぼる」とかの造語にはノリきれなかったよ…。ごめんね。


逆境無頼カイジ 破戒録篇・25話。身も世もなく相手にすがりつき、みっともないの極みの醜態を見せるカイジさん。先週も書いたが、この醜悪さのノリが福本節ではあるよなあ。凡百の作家なら、曲りなりにも高能力な主人公にこここまでのヘッポコイヴェントは用意しない。ま、このグズグズがあるからこそ、そのまんま逆転した状況たる一条の引き分け提案シーンがヘンテコに輝くワケだけどさ。自分あんなけダダこねといて、相手には「もう遅い!」の一言なんだもんなー! 正しく勝った者勝ちの世界ですよ、うん。


そんな状況もおっちゃんの金投入によって大逆転、カイジさんご一統はとうとう勝利を掴むに至る。前シーズンの名シーンを思い起こさせる「押せ押せ」のコールとか盛り上がりも充分だが、さすっがに引っ張りすぎた感は否めんなあ。これでも相当、アニメ化にあたって再構築してるんだけど…でもねえ。似たようなシーンと絵柄の繰り返しがちょっと、キツい所はあるわなあ。


それでも勝利シーンの「至福の雑用」と「至福の呆然」は笑いつつも独特な視点ではあるなと。やっぱこのおっさんおもろいよ。てことでさて…そろそろシメますか、ね!