ゴシック/シュタインズゲート/夏目友人帳

GOSICK・最終話。ブライアン逆恨み…というか複雑な愛憎というか、そんなもんのために追い回されるヴィクトリカさん。今まで命など何とも思っていなかったが、ことここにおいて死ぬのは怖い。それはお母んやみんなや久城さんの存在を知ってしまったから。そうかと思えば瀕死のブライアンをわが身張って救おうという気概も見せたりする。要するに彼女は、久城さんたちとの関わりを通じて「人」となった、っちうことだ。狼より人となりし小娘の、さてその願いは如何なるか。…ラスト、モンペ姿で銀髪を揺らすヴィクトリカさんのミスマッチな美しさは流石の演出ではあるな。


それにしても、最終アークを通して久城さんは全く何もしない。いや彼は彼で苦労して生き延びてるんだが、ことお話の展開への寄与となると全く何もない。ただただヴィクトリカさんの心と命の支え、存在理由、心臓の象徴としての役割である。ラストシーンでの現れ方といい、何というかその、久城さんがヒロインなんだなあ、という印象。お姫様なのよね彼ってね。うん。


あとは何だ、今ワシらが居る世界線とは異なるらしく、1920年代で既に単葉低翼の爆撃機があったり白ラインの重戦車があったりと結構な時代の進み具合。この調子だと21世紀にはどんな世界になってることやら。…爆撃機の方はよう判らんが、あの戦車はIS-2やよね。いやあの世界にスターリンが居てるかどうか判らんから「IS」っちう名前かどうかはともかく。ま、そんなことはよろし。…あとあの挿絵暴走シーンが目立ってたなあとか思ったら原画に宮沢康紀。偏見かも知れんけど、まあこの人だよねえ。


●総評。20世紀初頭の架空のヨーロッパ小国を舞台に繰り広げられる、ちんちくりんのゴシックちゃんとすっとこどっこい日本人コンビの推理ミステリ話…では、あんまりない。いやまあジャンルとしてはそうなんだけど、原作はともかくことこのアニメアダプテーションにおいてはどうも、推理的要素にそれほどの演出的力点が置かれてないように感じられる、のよね。


じゃ何のアニメかって、そらもうゴシックちゃんことヴィクトリカちゃんの立ち居振る舞い、行動言動、その描写を賞玩するアニメである。無愛想に他者をあしらったかと思えば菓子を前に相好を崩し、寂しさにいじけていたかと思えば下僕(久城さん)の登場にツンケンしつつデレたりする。そんなヴィッキーちゃんのかわいさ一点突破で2クール。そんな作品。


いやいやそれはそっちの見方の問題であってホンマはミステリなんですよ、っつったってワシはそれで十分楽しんだのであり、それはそれでもうエエやないですか。正しい見方もできない下世話な塵芥アニメファンめ、そんな皮相なコンテンツ消費ばかりしているから貴様は薄っぺらいのだ。…うん、ええ、そう思います。


でもまあ、構造のメインに「ヴィクトリカちゃんのかわいさ」を持ってきてみると、その他の要素…ミステリとか推理とか古風な設定とか…もうまいことはまるっちゃはまるんだよな。ミステリ的要素が弱く見えるってのはそれがこの作品のメイン構成要素ではなく、かわいいヴィクトリカちゃんをもっとかわいく見せるための補助線、ディテイルの一つであるからである…とすれば割と腑に落ちる。


とまれ。少なくとも流石はボンズ、2クール通じて絵的にアラが出てくることがほとんどなかったってのは大層なことである。ヴィッキーちゃんに限らず、結構めんどくさいデザインのキャラや設定も多かったのにねえ。あと悠木碧さんはそのちょっと高音部不安定なトコ含めて、ヴィッキーちゃんのかわいさにキッチリ貢献していたと思います。うん。


…読み返してみたら何にも書いてないのとあんまし変わらん文章だな。まいいや。ワシは楽しんだし、それでよし。


Steins;Gate・14話。マユリさんは死ぬ。オカリンのタイムリープマシンを使って何度時間を巻戻しても、どんなに死の原因から離れようとしても、「マユリさんの死」というイヴェントは覆らない。うーむ、これはなかなかキッツイ七度狐やなあ。目の前にタイムリープマシンという僅かな希望の余地があれば行動せざるを得ないし、必然的に何度も何度もマユリさんの死と苦痛を見なければならない。精神的にへとへとになりつつも、よくあそこまで持ちこたえたものだ。普段の中二的ペルソナをかなぐり捨て、あれは遊びのようなものだったんだ好奇心だったんだ、だからマユリを殺さないでくれ、と身も世もなく懇願するオカリンの姿にちとグッと来たり。


そんなオカリンに、まずクリスさんが、次いでアマネさんが事態の共有者となる。そらね、一人で背負い込むには辛いわよね。そしてアマネさんより明かされる事実の一端は、彼女が2036年よりの未来人であることと…彼女こそがジョン・タイターその人であること。前者はともかく、後者の事実はおーそういやそうだよなと思ったり。多分1話から見返したらソレっぽい伏線がいろいろあったんだろうな。まいいや。


とりあえず、マユリさんを救うには単なる歴史介入以上の大改変を行わなければならないようで。つまりは今以上に話の流れが混沌としてくるっちうことですな。そら大変だ。…あと、モエカさんの言う「FB」なる存在は何でしょうね。人か組織か物体か。今まで劇中に登場してきたものの中にあるのかしらん。さて。


●新番組・夏目友人帳 参。以前の地上波アニメ化シリーズは一通り鑑賞、その静かなトーンによる語り口は割と好き。以前見てから結構な間が開いているのだけれど、基本的には各話完結で構造がそれほど複雑じゃない作品なのですぐにノリを思い出す。そうそ、この夏目さんと先生のデコボココンビが妖怪と友人と…それに、過ぎ去りし夏目レイコおばあちゃんの影に振り回されるお話、ですなあ。


今回は呪いのおばばが登場。呪いとは言い条やってることは思い出話して友人長の名前を返すだけなんだけど、新シーズンの紹介話としてはエエ感じではないかな。おばば役に京田尚子、まだまだ現役さんのようでうれしい限り。


この作品の特徴として妙にユルいストーリーラインっちうのがあって、シコミとバラシ・伏線と展開が呼応する緻密さとはちょっと異なる駘蕩さがあるのだが、今回もそれは感じられる。冒頭と後半に登場する乱暴な妖怪は(一応撃退されるものの)何だかよく判らないまま逃げてっちゃうし、付喪神の亜種みたいな「陰茶碗」のエピソードの本筋からの距離感も面白いし。おかげでいかにも妖怪譚らしい奇妙な雰囲気があり、またお話がどう転がるのか予測しにくい楽しさもある。妖怪たち(特にサブ)の、ちょっと人間たちから浮いたデザインも好き。


てことで、ゆったりと楽しめそう。視聴継続。