ヘミングウェイごっこ

●てことでただいま実家より戻りました。いやーやっぱウチが一番やねえとかかとを三度打ち合わせ。電車内と帰省中時間で一冊読みきっちゃったので、感想書くいとこ。


ジョー・ホールドマンヘミングウェイごっこ」読了。ホールドマンですよホールドマン。ワタシこの人の著作って終わりなき戦いと平和の二つしか読んだことなくて、てことはつまり向こうさんの思惑通りに「へーそーなの、こんな作風の人でもあるの」とて感心しちゃったりしたワケなんですけどね、ええ。


何かかんか言おうとしたことは、あとで大森望の解説読んだらほぼまるまる…いや当然、それ以上に書かれてたのであって、付け加えることはほとんどなくなってしまいました。とりあえずワシ風に初っ端ら辺だけでも紹介するとですね、ヘミングウェイオタの研究者さんが妻と詐欺師に唆されて完璧な贋作を作ろうとする、ってなお話。


…このまま素直に話が進んでってくれたらちょいと小粋な文学史ミステリにでもなったろうに、そこはそれホールドマンっすわ。中盤から何故かワシらSF者がどうにも見慣れた道具立てが出てきましてですね、なんか知らん「この先滝あり」みたいな感じにお話の流れが加速かつ混沌化してきてですね、最後はワヤクチャ。解説によれば「よく読んでみると説明がつくように書いてある」のだけれど、もうそんなんなくてもエエわ、ワシ。このブン回るドライヴ感だけでもかなり満足。うん、よし。


とまあ、スジの流れは割とオチのギミックに向けてのアイデア小説に近いんだけど、たぶん本書の魅力はそこじゃなくて、「ヘミングウェイ贋作」のディテイルこそが一番なんでしょうな。たぶんとかでしょうとかモヤモヤした言い草なのは、ワシが全然ヘミさんに詳しくないからでありますけどね。無論そんなもの知らず野郎にも充分楽しめるお話なんだけど、ヘミさんフリークならこの256倍は楽しいんだろうなあと思うとちと妬ましい。…なんせ上記の大規模カオス状況に陥る重大無比な原因ってのが「ヘミングウェイの作風がアレだから」…ですからねえ。なにそれ。すげえ。


これ、長さといい筋立てといい、割と映画栄えしそうな作品なんだけどな。米国人、ヘミングウェイ好きじゃろ? とかワシなどが言わんでもそういう話が水面下で進んでそうやけどね。どうでしょうね。