東京マグニチュード

東京マグニチュード8.0・最終話。長い彷徨と時間を経て、だが彼女はウチの玄関に入ることが出来ない。ユウキさんが居なくなってしまったから。「帰れない、一人でなんか」、だ。しかし彼女に帰宅への道を歩ませるのは、他ならぬそのユウキさんである…いや、それはミライさんの心の声なのかもしれない。その足下に影がなく、常に正面からの光源を持つユウキさんという描写は判りやすい。…光源はともかく、影って先週や先々週も無かったっけ? まいいや。


そしてミライさんはウチへと帰り着く。両親とその感情を共有し、マリさんによる大きな大きな支えを受け、少しずつ日常へと復帰してゆく彼女。ここで登場の、ケータイを使った「既にここにはいない人物からの時間差メッセージ」という定番エピソードですよ。うーん、王道展開にキレイに乗っかってて美しい。エエとこで決めるなあ。


マリさんの「周りはみんな元気そうに見えるのに」という言葉は、何か大きな事件や喪失を経験した人間はみな思うことじゃなかろうか。自分はこんなにエライことになっているのに、何故世界はこんなに普通なのだろう。周囲の世界と自分のセカイが直結していないことへの強烈な違和感、あるいは不条理、あるいは羨望。そのギャップが埋まってゆく過程が大事なのだろうな。


総評。内容聞いて一話見たあたりでは、いわゆるディザスター映画っぽい話に啓蒙的要素を絡めていくような作品かな、と思ってましたがね。確かに序盤はその通りなのだが、後半はもっとメンタルな、災害に伴う人的な喪失についてのお話になってったのは割と予想外だった。確かにそういう問題は避けて通れない、通れるハズもないワケで。


ともすれば学校の講堂で見せられるような作品になりがちな(ま、実際ちょっとそんな雰囲気もあったりしたけど)ところを、手堅い演出にシンプルだが表情豊かなキャラデザインで割とTV番組的に仕上げてたのも印象的。うん、丁寧な作り方に好感持てる作品だったですよ。物語の性質上続編とかはなさそうだけど、ま、この枠にはこんな作品もアリなんですよ、ってのは歓迎したい。しかしこの枠はいろいろと制約がありそうなのに、各作品意外とバラエティに富んでるなあ。


あーあと、あの災害救助ロボットたちは作品の流れからちょっと浮いてた感じがしないでもない。どっかからの横槍で入れられた、みたいな雰囲気というか。ワタシはカッチョ良いMECHが出てくればそれで満足気味な、あのメガネ少年っぽい気質なのであんま文句は無いのですけれどね。