夢の話は誰も聞かない

●夢を見る。自分たちは合宿に来ている。宿泊しているホテルが奇妙な構造のもので、まるごとターンテーブルの上に乗っかっているような状態であり、一日に何度か建物ごとドンデンの如く回転するのである。回転中の振動の中、手洗い場にて若い女性と会話する。ヘンなホテルですね。ええ、でも何だか遊戯施設のようでもありますわ。確かに奇妙なスリルを感じます。本当、またもう一度改めて宿泊しようかしら。楽しんでいらっしゃるようですね。楽しんでいますわ、貴方も楽しんでいらっしゃるかしら。なにやら好感の持てる女性であるが、いかんいかん勘違いするなよ俺、この方はきっとみんなに優しい博愛の人に違いない、俺の如きヘボタレた野郎がどうこうするようなケースは無いのだぞ、とか思っている。


場面変わって合宿から帰還した風景。自分の実家近くである。周りの人間は呑み会に行ったようであるが、その場所は近くに新規開店した呑み屋であるらしい。自分たちが行きつけの居酒屋の老夫婦オーナーが新たに開店した店舗で、急勾配の歩道を挟んで左側が大将の店、右側が女将の店である。狭い店舗は双方とも既に大入りであり、呑ン兵衛の女の後輩が一人上機嫌で二つの店を行ったり来たりしている。


自分達は右側、女将の店に入る。狭い店内の真ん中に囲炉裏が切ってあり、その周囲をロの字型にカウンターが囲んでいる。内部は白熱灯の黄色い光で満ちている。自分達は二階に上がる。背の高い先輩がメニューを開いてふーむと唸り、「品揃えが良い。無駄がない」と呟いている。アルコーヴのような壁の凹所に小さな流しがあり、自分はそこの下の空間に荷物を置いてからメニューを見る。最後の頁に「ゲームで買ったら現金還元!」の文字がある。どうやらそういう小さな客寄せサーヴィスをしているようだ。


ほほうこれは面白い、これで呑み分チャラとかにできるかな、と言い合っていたら、先客である二人連れの女子学生がいやあそうは行かないよと言う。一人はザックリした茶髪のメガネ、もう一人は前髪パッツンのセミロング黒髪。茶髪女子の方がアニメのようにメガネをキラリと光らせ、全額なんてムリですぜ精々が二三千円程度、と言う。そんだけ戻ってくれば充分じゃないかなあと思っている。という所で目覚ましが鳴った。


●いやあ、これはいかん。このトシになってこういう郷愁的な夢は覚醒してからのダメージがでかい。ああ楽しい時代だなあとか、もうねえ。これから更にトシ取ってくとどんどんこういう過去指向性の夢が増えてくんだろうなあ。もうねえ。