分解された男

アルフレッド・ベスター「分解された男」読了。…本読み終えたのは久しぶりと違うかなあ。大昔読んだことあるハズなんだけど、ほとんど忘れてたので大いに楽しませていただきました。ビバ駄目ノウレッジ。あでも、例の「いわくテンソル」の歌はよく覚えてたです。そういう歌ですし。


内容は忘れてたものの「なんかヘンな話だなあ」という感想は覚えていたのだが、今回再読して理由が判った。ガキたる当時のワシはこういう悪漢主役物語を読み慣れてなかったんだな。いやまあ、ピカレスクじゃなくて倒叙モノだともいえるけど。


ともかくアレだ、これもベスター作品の例に漏れず、一人として普通の人間が出てこないステキ小説ですよ。そして一シーケンスに必ず一つはバカアイデアを突っ込んでくる、ある種の律儀さも如例である。この辺はテレビなんかのライター稼業でもまれ続けた故の技量でしょうかね。


頭からケツまで狂騒と過剰を失わずに突っ走る態度は実に楽しい。そういう「ベスターらしさ」は第二作目の「虎よ、虎よ!」の方がさらに過激なのだけれど、こちらはこちらで愛すべきカッチリさがあって悪くねえ。それでも最後の一ページでいきなりクソ巨大視線になっちゃうイマジネーションとか、もうたまりまへんな。純粋にカッコよろしいですわ。


…これはワタシが現代ハリウッド映画に慣れすぎたせいなのだろうけど、主役級二人のうち追跡者たるパウエル刑事をですね、なんとなく黒人っぽいニュアンスで読んじゃってたんですねワタシ。ちょっと前のデンゼル・ワシントンみたいな感じで。今映画化したら十中八九そうなるんだろうな。ええと声は江原正士辺りで。