スノウ・クラッシュ

ニール・スティーヴンスンスノウ・クラッシュ」読了。同著者の「クリプトノミコン」がおもろかったので購入。以前から気にはなってたんだけど、鶴巻和哉フリクリィな表紙絵がどうも軽そうで二の足を踏んでいた。いや、鶴巻さんの絵自体は好きですよ? とあわててフォローする。


んで、おもろかった…というより、楽しかったなあ。10年ちょい前の作品だけど、アバターを介したネット空間の狂騒的な描写は、今見てもかなりなリアリティ(と良い感じのウソっぽさ)がある。


その上で、「クリプト〜」でワタシが一番気に入った「小ネタの連鎖」という側面も大発揮。一シーンに一つ、「どっかおかしいんじゃないか」てなネタを必ず入れてくるサーヴィス精神には頭が下がる。「トイレットペーパーをみんなで買おう」という意味の社内文書が6ページもあって、それをまるまる掲載する…という天才的に頭の悪いネタに大笑いした。また良く出来てんだこの文書が。上手いなあ。


とにかく価値観や常識を一旦引っくり返してから構築し直すやり口がすごく上手い。で、ちゃんとおもろいネタに昇華できるその技量。「ピザ配達人が最大に賞賛される世界」というお題でマトモな物語を構築できるか? 普通。


一方で、意外なくらいしっかりしたスジもある。コンピュータと人間とウィルスの関係から、古代文明にまでさかのぼってしまう大風呂敷に感心しました。中盤に主人公がライブラリ・ソフトと対話するパートがあって、作品を破綻させかねない勢いで延々と続くんだけど、これが実に面白い。少数のキーワードからずるずると巨大構造が引っ張り出されてくる快感。…まあ、ワタシがシュメール神話好きってのもあるかも知れんが。


クリプトの時にも言ったが、このゴテゴテ感は講釈師のワザだな。上方落語とも言えるか。うん、楽しかった。「ダイヤモンド・エイジ」も読んでみたいですな。


一件だけ。この作品のネット世界、女性用のアバターのちちのサイズは最低が「ありそうもない」で、あとは巨大になるばかり。…ぺた娘お断りとは、大きなビジネスチャンスを逸しましたね!