弱虫ペダル/蟲師

弱虫ペダル GRANDE ROAD・11話。広島待宮を下し、先頭集団に復帰する荒北さんと一年生二人。ここにきて箱学・総北ともにフルメンバーとなるのだが、二人だけの京伏・御堂筋さんは「まァそれでもエエ」と嗤うのである。レース最終日も終盤、ここからはどんどんと脱落してゆく者が出てくるのみ。そう、まずはあの荒北から…というね。

待宮さんとのアレコレを経て、次のシーケンスに移るまでのツナギっぽい話ではあるのだが、それでもメインの話として「荒北さんの退場」という大舞台を用意してあるのでなんかかんかそれっぽい感じにまとまっておられる。ちうか最後にひと仕事しーの、この三年間を回想しーの、脱落してからは登場人物の心の声をかけられーの、とフルコースの花道で退場させてもらっててよろしいな。浪花節のベタベタ話ですけれど、こういうのってそれはそれで演じるのは楽しそうだ。いつの世も「俺はここまでだ、あとは頼むぜ」っちうポジションには少し倒錯した快感があることですな。

しかしまあ、荒北さんがお姉さん方に人気が高いってのもよく判る。表面上はあくまでツンケンと接しつつ、ダチ公となった人間にはデレ要素が(読者視点からは)激しいという、確かにこの人は実にあざとい。今回だけでなんべん「福ちゃん」つったのかしらね。最後のCパートと予告映像までもらって、彼のミリキマシマシである。…ご優待されてんなあ。

蟲師 続章・9話。その村では亡くなった人を山に還して弔うというしきたりがある。山に置いた死者はやがて消え、その着衣装備のみが残る。死んだ者を苗床として育つ蟲、ムクロソウ。それは死者とのみ関わり通常は生者には関係の無い存在なのだが、しかし死とあまりに近づきすぎた者にはどうだろう。死を見る者、死に見られる者。…蟲はただ、その関係性の象徴に過ぎぬのかもしれない。

別にいつもほんわかしてるワケでもない本作であるが、それにしてもここまでガッツリとダウナー連鎖な話は珍しいかもしれない。生と死というひっくり返せぬ概念をひっくり返そうとしてしっぺ返しを喰らう話は割と定番で、今期だとタイムループトンネル蟲の話とかがそうだけど、この因果応報感は1期の一夜橋の方をこそ思い出したりした。あっちよりも更にじめっとした負の描写がストレートで、殺した兄弟が起き上がって黒いモノをドリップさせてるとか人の形に蟲の草が生えてるとか、なんかこう…やりきれない諦観よりも「うへー後味わりー」って感じの方が強かったわな。

今回のギンコさんはこの、割と救いの無い状況に対して過度に干渉と感傷を用いることなく接してる具合がよろしくて、なんかかっちょよかった。どうも後ろ暗い所のある相手に対して核心となることを伝え「俺が口を出すのはここまでだ」とだけ言い置くとか、結局どうにもならなかった「跡」を見て「山にも還れなかったのか」と呟くとかね。…ま、甥のソウスケさんがどーなってくのか、その辺はかわいそーっすけどね。どうすんだろ。

中盤の「山に還る途中の死者」の絵、身体から一面にスギナみたいな蟲が生えているというわさわさ嫌いの人にはキッツイ描写なんだけど、体の方が真っ黒けっけなのはあれ、修正によるものなのかあるいはそういう色になるという設定なのか。修正ならばソフト化の際に黒塗りが取れるのかもしれないが、この「黒い人形物体から蟲がみっしり」という絵面でも十二分に気色悪いので、これはこれでいいなとか思った。