シドニア/ピンポン

シドニアの騎士・11話。全長でシドニアの20倍、体積だと8000倍(まあ三乗だからそういうことやね)の超巨大ガウナさんの襲来である。斜め加速で回避してもキッチリ追尾してくるのでもうしょうがない、できたてホヤホヤの新兵器でもって迎撃任務に向かうご一統。しかし推進部破壊担当の第二小隊はあっという間に全滅。こーなったら小惑星破壊ばくだんを使い、ガウナの内側からとどめをさすしかない! ついでにベニスズメも出てきたしもうどうしたものやら! っちう話。

クライマックスの一区切りに向けて、なかなか厳しい…まァ別の言い方するなら「盛り上がる」バトルシーケンスではありますな。超巨大ガウナを破壊する為の段階的な作戦描写とか、強力な新兵器であるナガモノのバレルをパージして軽量化を図るとか、そういう戦闘時のディテイルが割と素直にカッチョ良くてよろしい。こういうのって男の子、好きやよね。

回想シーンにて「このシドニアの全てが好きだ、自分はシドニアの騎士だ」と言うてタイトル回収をし、主役としての任を果たした谷風さん。このタイミングで真正面の主人公的言動を持ってくるってのはベタながら効果的で良し。さて、あとはどうやって巨大ボスと決着をつけるか…ってとこか。次回最終回だっけ?

●ピンポン・最終話。インタハイ会場のどこか落ち着かない、ざわざわとした雰囲気の出し方が上手いアバンのシーン。熱に浮かれたようなぼんやりした空気の中、スマイルとペコはやっとこさ再度の対戦へと向かう。「遅いよ、ペコ」「そう言ってくれるな、これでもすっ飛ばして来たんよ」だ。ヒーローは満を持し、遅れて舞台にやってくる…。

もはや勝敗など意味をなさない、ただ二人で打ちあうのみの対戦シーンが美しい。まァよう動くことでと感心もするし、どんどんと色が薄くなってゆくあの純粋な世界がうらやましくもある。そのモノクロの世界で、ただ赤い血潮が際立って見える。「血は鉄の味がする」。ロボットの中に閉じ込められていたスマイルの人間性が、文字通り炸裂して外に出てくる絵面のなんと情熱的なことよ。

エピローグ。皆が皆それぞれに、前向き極まりなく進んでいることが示されるこの物語は生き生きとしつつも、優しい。憑き物が落ちたように笑い、語るスマイルもエエし、今までのストイックさを埋め合わせるようにイージーゴーイングなドラゴンも楽しい。…個人的にはジジババ三人のどうでもいいような語らいの絵がもう、いろいろと良くてねえ。一瞬往年の姿を幻視する、あのノスタルジーはおっさんになると結構クるものがあります。

●総評。松本大洋の原作を伊東伸高の絵で湯浅政明が監督してアニメ化する、というプロジェクト。前にも言うたけど、この組み合わせはハマりすぎてて逆に「大丈夫か」と思うくらいのマッチング具合である。ハマってんならエエやんけってのはその通りだが、ここまでガッチリだと作品として先鋭化し過ぎ、あまり普遍性のない…要するに「気取った」ものになんじゃねーかな、って懸念がちょっとだけあったりしたんよね。ワシ。

蓋を開けてみればそれは全くの杞憂であった。全話どのシーンを見ても生き生きとしたパワーと勢いにあふれ、見てるだけでちょっとだけでも元気になるような雰囲気のある作品になった。元々からして湯浅監督、根っこんところはベタでストレートな情感を大切にする人ではあるのよね。巨大ロボ好きでアクション好き、無茶苦茶な生命力の奔流によるカタルシスをやらせて右に出る人はいない。そんな資質が、パッションたっぷりの松本作品の波長とベストマッチなのであった、ちうこっちゃな。

マインドゲーム、四畳半神話大系、そしてこのピンポンときて、湯浅監督の作家性というものについてはもう全幅の信頼を置いていいんじゃないかな、って気がしている。作家性というかストーリーテリングの才というか。元からワシ、この人の奇抜でぶっ飛んだ絵作りにはホトホト参っておるのだが、物語の再構築、あるいはその精神性を受け継いでアニメとして作り上げるという難事をちゃんとやり遂げる手腕は見事である。…劇場映画だけじゃなく、こうして毎週お届けの地上波アニメの仕事をちゃんとやってくれてるのがうれしいよね。

てことで。えー、うん。もう特に文句もないや。こういう作品ができあがることがあるという、その事実だけでワシは結構うれしい。堪能いたしました。ありがとうございます。