偽物語/宇宙海賊

偽物語・最終話。え、これで最終回なの? いやお話としては問題なく終わってんだけど、話数的にもう一つ二つあってもよいのではなかろうか、とか…ああ、またネット上で付け加え話とかやんのかな。まいいや、とりあえずこれで一段落ってのはオッケーですが。


てことで、ツキヒちゃんを巡って相対するヨヅル/ヨツギとアララギ/シノブさんの両ペアである。その間に発生する大格闘…何か知らんアララギさんは「暴力的なかわいこちゃんにボコボコにされてシメ」っちうのを生業としてんでしょうかね。しかし今回もそのアクションシーンは中途あたりで肩透かし方面に進み、そして重なってゆく言葉にて話を終える。毎度ながらその「肩透かし方」はこの作品らしいヒネリと諧謔てんこもりである。「偽」なるものこそ価値がある、なんとなればそれは「人と為す」意思があるからだ、っちう屁理屈はちょっとジョイス的、正確には柳瀬尚紀訳のフィネガン的で面白かったりした。


…ま、そうね、ヨヅルさんたちにあってはちょっと最終シーケンスの物分りが良すぎるかな、尺が足りなかったかなっちう感じはしましたけどね。多分、こののち彼女たちの人となりが語られるような機会があれば、その辺も腑に落ちてくるのではないかなっちう気はしますけれども。


●総評。西尾原作と新房監督のコラボレーションアニメ第二シーズン、である。つまりシナリオ的に饒舌で画面演出的にも饒舌な、コテコテに濃ィい感じのアレですな。実際、毎度々々本流の如き情報量に圧倒されつつ視聴してんだけど、枝葉末節取り除いた根幹部分だけど見ると意外と地味でアッサリしたお話なんだよね。…タイトルである「偽物」ってのが象徴的であるけれど、そんな枝葉末節の部分…普通ならば本質から外れた部分こそが重要であり、見てて聞いてて楽しいんだヨ、っちうところもあるかもしれない。


そうね、やたらとムダの多いお話ながら、しっかりと視聴者に向けてのサーヴィスは忘れないってのはこの作品の美点だと思う。ちうかその「ムダ」部分が美点なんですけどね。うーん、やっぱしあの「歯磨き」のシーケンスは今考えてもバカチンかつえろっちくてよろしかった。個人的な嗜好からするとちょっとワザとらしくて過剰なんだけど、それも含めて上手いなと。


キャラクタで言うならば貝木さんですね。多分この作品で初登場の「判りやすい対立者」であり、非常に完成度の高い胡散臭さとヘリクツ加減が魅力的なおっさんである。現象面だけで見れば「主人公たちと対決のち大損こいて逃げ出した」に過ぎないのに、アニメとして見てる分には「憎たらしくも華麗に勝ち逃げして去ってった」と思えてしまうその手練手管。貝木さんの、というよりは原作とアニメスタッフのヤリクチが素晴らしかったですわ。


作品全体で見ると、上記の過剰さやスタイリッシュさはあまりワシの趣味ではないところもある。でもそれらの要素が無ければ「アニメ偽物語」とは言えないよな、ってとこまで突き詰められてるとも思う。うーん、まあ、面白けりゃそれでいいよね。…どうやらまだアニメとして続きそうな勢いであるようなので、機会あらばお付き合いしてゆきたいと思います。


モーレツ宇宙海賊・11話。王家あっちとこっちに分かれての宇宙船争い、そんな中で時空震の果てに目的の「黄金の幽霊船」は姿を現す。言ってしまえばそれだけのお話に過ぎないのだが。基本となる話のスジ…ううん、「スジ」というよりも目まぐるしく変わる周囲の状況というべきか…そのサスペンス構築の上手さ、細かいディテイルをおろそかにしない演出、そして個性豊かかつ各人が一流の人間力を持つキャラたち。いやあ、なんと濃厚な1話であったことか。見終わってフッツーに「…面白ェ」つって呟いちまったよ。


ワシ的に一番魂に響いたのは様々なロマンちっくSF描写ね。時空跳躍前には家具装備品をガムテで固定! 「超新星なみ」の重力波は船首から受ける! システムダウンしたのでエアロックは手動で開ける! 戦闘時の入港速度はぶっつける勢いで! …などなど、もうそういう単語のつるべ打ちってだけで嬉しくて仕方がない。百目さんの「初期設定からやり直しかー!!」の悲嘆はよう判りますですよォ。あと「回転するリング状の高密度重力源によってムリクソ空間を歪曲させる」ってネタはどっかでも見たなあ。規模がデカくなればバクスタージーリー・リングか?


てことで、これは面白かった。ブリッジからほとんど出ることなくワケの判らん状況に対処してるだけ、っちう設定でここまで手に汗握らせるってのは凄まじいや。えー、次回からは妹姫様相手に王家の小競り合いっすかね。なんかこないだ出てきた斧アツシ声の執事さんも出てますが、これまた強キャラ臭がすることだなあ。楽しみだ。