世界の中心で愛を叫んだけもの

ハーラン・エリスン世界の中心で愛を叫んだけもの」読了。今まで読んだことなかったのだが古本屋で見つけたので買ってきた、のがもう数年前。そのまま本棚の裏に落っことして忘れてたのを見つけた、のが一月前。んで読了しました。


いまさら言うまでもないカリスマおっさんであり、その先鋭性とキッツい感性が有名なんだけど…流石に五十年近くも経ってしまえばもう古典だわな。当然雰囲気も使用語彙もシチュエーションもテーマも古びた印象を否めないが、まァ…そんなディスアドバンテージを吹っ飛ばす力量と才能はガッツリと明らか。事実ワシこれおもろかったもんな。


解説にある通りこの短編集に…まあ有体に言ってこの作者にだが、一貫している主題は暴力と愛でして、そういう意味で表題作が表題作となっているのは実に大正解である。正直言うとワシこの表題作はあんましピンと来なかったんだけど、でもどれを表題作に置くかと問われればこの表題作を表題作に置くしかないだろうな、とね。そのくらいこの表題作の表題はキャッチーであり、またこの短編集の表題として正確なものであろう。まいいやどうでも。


それにしてもこの、直截的な暴力描写はやはり、すばらしい。現在の目から見るとそれほど過激というワケではないが、何というかこの「暴力性がナチュラルに備わっている」という感覚はちょっとワシら農耕民族では出てこない風情である。「101号線の決闘」という短編、未来のハイウェイ上で改造車によるデスレースに身を投じるおっさんの話なんですが、この至極単純なプロットにストレートなバトル描写がもんのすげえパワーでよろしいのね。また主人公のおっさんの、小市民が抑圧している鬱屈の爆発ぶりがリアルでねえ…。結局暴力の連鎖にはキリがないっちう落としどころも、あーそうねーこれは「そういう世界」にどっぷり漬かってるお人の言葉だよねーって感じの代物でねえ。


あと「眠れ、安らかに」。話の根幹となるネタはちょっと幻想も入った寓話的なものなんだけど、それと不可分にある闘争シーンがまたよろしくてね。潜水艦同士による海戦なのだが超能力バトルがメインなのなこれ。おまけにその描写の細かいところは、超能力モノと言うよりは…現在のワシの目から見るとそのまんま「電脳モノ」、もっと言えば攻殻世界のそれなのだ。精神攻撃によって脳を焼ききり、すかさず防壁を組んで防御し、精神的に逃走しつつトラップしかけて迎え撃つ。元ネタ云々はともかく、絵的にすごく判りやすい。


そう、読んでてヴィジュアルがバッと見えるような鮮烈さがあるのだ。これは長らくTV脚本家でずっとやってきた経歴のせいもあるんだろうな。低俗で、ショッキングで、表層的で、しかしどうしても愛からは離れられない。そんなメロドラマ。…大トリの作品「少年と犬」、これまたタイトルから受ける印象からはかけ離れた荒廃世界ヴァイオレンス話なんですが、これなんかいかにもアチラのB級映画になりそうだなーというキャッチー具合でよろしい…と思ったらもうなってた。見たことないし見るチャンスもなさそうだが、見てみたいものだ。見ないだろうけど。


てことで、エエ雰囲気に浸れた時間でした。…検索したらエリスン、まだご存命なのな。アチラでは結構著作もあるそうだが、邦訳はほぼこれだけってのは寂しいところ。ねえ。