氷菓/坂道のアポロン/つり球

氷菓・4話。えるさんと叔父の個人的な事情。自分の過去について「こんなこと誰にでも話せるもんじゃありません」と奉太郎には言うといて、状況が閉塞するとなったら早々に里志とマヤカのお二人にも話しちゃうえるさんは割とめんどくさい。まあそんなけ当時の叔父と自分の関係性が気になるから、っちうところだろうけれども。んでもってえるさんちに集まってはっぴょかいをする皆さんですよ、っちうお話。

今回もほとんど台詞と会話だけで構成されている。なんつーか、つくづくお手軽にアニメ化するには向かない原作だと思うよ。例の如く説明や回想シーンは視覚的に目先を変えた演出を並べて飽きさせないようにしているが、まず先に「苦労してんなあ」っちう感想が出てきちゃうのはあまし良ォはないな。いや、作画技量的にすげえので見てて楽しいのではありますがね。筆書きっぽい線画アニメシーンがインディーズ作品っぽくて面白かった。

ミステリの内容自体は今までとご同様、思考実験に近い理屈話で割と好き。今回の結果が「なるほど辻褄は合う」という程度でそれほどドラマチックでもないのは、次回以降の「隠された真実」の前のネタ振りだからではあろうか。できたらこのまま誰も死んだりケガしたり犯罪が絡んだりせず、(ハタから見たら)どーでもいいネタでミステリしてくれると嬉しい。

本筋とは関係ないが、今回の舞台がワシ好みな「やたら広くて迷路っぽい旧家」だったのでそれだけで満足。西洋的な迷宮屋敷もエエけど、どこか湿り気のありそうな日本家屋で延々と続く遠い座敷ってのもエエねえ。妙に広いトイレやキッチンはある程度今様な作りになっててギャップがあるのもよし。生活感と非現実感の同居ですなあ。

坂道のアポロン・5話。前半は思いを伝えたがためにギクシャクしてしまうボンとりっちゃんの話、後半はボンが母に会いに行く旅路に千太郎がくっついてくる話。それぞれ、ちょっと膨らませれば充分に一話分として成立するくらいに「実の詰まった」お話である。これだけくるくる場面と展開を変えておいて、しかし全体としてそこまでせせこましい感じを受けないのは、相当に要素の取捨選択のディレクションに気を遣った結果ではあろう。…でもね、なんかちょっと勿体ないなとは思ったよ。お母んとの邂逅と会話なんか、もっともっとしっとりとムードもて時間を演出できただろうな、とか思ってさ。これ1クールだっけ? 制作側も苦慮しただろうな。

それにしても、千太郎さんはボンの心がヘコんだときにいちいち介入してきて、んでもって(ちと手荒いやりかたながら)ちゃんと立ち直らせてゆくという、まァ得がたい相棒ではあることだ。夜中ボンの部屋に踊りこんだ上でノックの音に慌てて隠れるなんざ、ほとんど人妻と間男の関係性である。ちうか千太郎かわいいな千太郎。

前半部分、特にボンと千太郎とりっちゃんの年少三人、彼らのちと不器用で素直になれない気持ちの揺れ動きがエエドラマであって、見ててもうくわァァって感じでした。糸電話で本心を語り、語ったことでお互いに傷ついてたりして、ああもう青春やなお前ら。いや青春時代が夢なんてあとからほのぼの思うものだろうが、今はあとからほのぼの思うために見ているので何も問題はない。うん。…回顧と言えば、淳兄さんがどうやら学生運動がらみのゴタゴタに巻き込まれた、っちう辺りで強烈に時代性を感じました。セクトなんて言葉久々に聞いたよ…って、押井アニメ見てたらちょくちょく出てきてたか。

つり球・5話。ユキさんはなんだかとっても釣り道具が欲しくなってきたのであるが、本格的にやろうとすると一介の高校生として大概なお金がかかるので困ります。ならばってンで、釣り船船長アユミ兄さんのバイトをやってみましょうか、っちうことになるのだが…というお話。

はじめのうちはいつもどおり、順調に状況に巻き込まれてゆくだけのユキさんであるのだが、やがて楽しさと意欲をもって自分のほうから積極的に釣りへ/友人へ/外界へと関わろうとしてゆくことになる。バイト初日にいろいろ失敗してしまったユキさんが、それでも修理したタモを持って釣り船へと駆けつけてくるシーンがこの話の判りやすい転回点であろう。…うん、とっても素直にエエ話。このタイミングでここまでストレートにエエ話だと、うわーこのあと一体どういう風に暗転してゆくんだろう、とかしょーもないことを考えてしまう。ま、これは余計なお世話ですな。

仲間内での「釣りセンセイ」として普通に話しているナツキさんがなんかエエよね。初っ端の印象はお互いに最悪だっただろうが、実は面倒見がよくてエエ男であるナツキさんの素性が心地よい。彼がちょいとフランク過ぎるお父んと和解するのはいつの日だろう。