ピングドラム/タイガー&バニー/セイクリッドセブン/神様のメモ帳/青の祓魔師

●新番組・輪るピングドラム幾原邦彦久々の監督作品…って、検索してみたら地上波アニメ監督としてはホンマに久々、ウテナ以来なのな! のだめとかソウルイーターとかで最近も時々見てたから、ちょくちょく監督仕事してたような印象があったっすよ。てことで見てみたのだが…うん! 流石だ! ジャンルが何なのかもよう判らん、この人にしてこの作品アリっちうアニメである。


イケメン男子双子と儚げな妹の、ボロボロのファンタジーみたいなおうち。余命少ない人生の思い出作りにと訪れた水族館であっというまにお亡くなりの妹さん。悲しみにくれる兄たちの目の前でペンギン帽子と共に復活する妹さん。…とここまでものすごいテンポで進む物語。かといってぎゅう詰めに詰め込んでいるワケではなく、(表面上は)直接関わりのない小学生の宮澤賢治談義をじっくり挟み込んだりしてて、要するに描きたいことをズバリと描く、その取捨選択が大胆なのだな。


そっから後はもう監督独壇場っすね。OP見て何かの象徴的マスコットかしらとか思ってた、古のひこねのりお的缶ビールCM的なペンギンもどきが出てきたり、ありゃこれがEDかと思いきや劇中演出だった歌と作画の饗宴シーンがあったり。「生存戦略!」っちう単語選択のセンスといい、いやこれは…面白いなあ。何だこの豪華なスッとぼけノリは。


モブキャラがピクトグラムだったり回想シーンのキッカケが駅の電車来訪表示だったり、というちょいと象徴的でシュールな演出。昨今いろんな人が自分の作家性とともに使用しているテイストの演出だけど、やっぱこの…何ちうか、家元の風格があるなあ。アニメ以外の畑で連綿と存在していたこういう手法を、この世界に持ち込んで一つの典型としてアダプテーションしたパワーとセンスは健在である。


てことで、初っ端のツカミとしては十分すぎる程のグラップ力でした。2クール作品だっけ? この世界観で半年間、どんな話を紡ぎだすのやら予測も立たん。期待させてもらいましょうとも、ええ。


TIGER & BUNNY・15話。スカイハイの憂鬱、または矢島晶子ロボ娘の巻。やっぱアレっすか、さとうけいいちつながりでドロシー出したいってことっすか。違いますかじゃいいです。でも相方も宮本充だし、ちょっとしたファンサーヴィス的な意味合いはありそうですけどね。ま、それはそれとして、トップから下がり落ちたスカイハイさんがこのドロシー…もといシス嬢と出会い、再び自信を取り戻すというお話。しかしその「自信の回復」行為は実に皮肉なものであり、かつその皮肉さが判るのは視聴者のみで劇中の誰も気付かない…というね。うーん、ちょっとおもろいツイストの話だなあ。ラスト、じつにエエ表情で花束持ってるスカイハイさんの絵でシメ、っちうのがまた、ねえ。


それにしてもスカイハイさんは徹頭徹尾良いお人ではある。ちょいと天然入っているものの、それすらも愛嬌に見えるは人徳か。ランキングが下がったことにしても、他のヒーローがねたましいとかじゃなくあくまで「自分はこのままでよいのだろうか」という一点で悩んでいる、ってのがこの人らしい。ナイスガイよねえ。だからこそ、何も知らないままあのアンドロイドを真っ二つにする、っちうクライマックスに見てる側はほろ苦いドラマを感じるワケで。


んでタイガーさんの能力昂進現象はどうも赤信号の可能性があるようで。やっぱしな、アイデンティティクライシスでんな。仮に彼が能力を失ってしまったとしたら、さて…しばらくそのことを隠して活動したりしそうではあるな。こてっちゃん無茶しィですから。あと大人気のお二人さんのスケジュールで「正月アニメのゲスト声優」ってのが妙に生々しいな。あー、あるよねあるある。


セイクリッドセブン・2話。いろいろモヤモヤはあるものの、とりあえずは日常に戻るアルマさんである…が、学園の日常はルリお嬢様がアレコレしたおかげでアレでコレなことになってますよ、の巻。学食のお値段据え置きで全て超高級料理に、ってのは一見大喜びな状況であるけれど、でもあの焼き魚定食もおいしそうだったしちょっと惜しいなあ。あと食堂のおばちゃんたちは全員馘首なんでしょうか。


えー本編はまたも敵の悪石が出現である。二匹目にして台風サイズとはまたスケールでっかいなー! 大空中戦で面白いバトルだったんだけど、そのデカさのせいか急所一撃のカタルシスが少々弱めだったのは残念。…大川透の鬼瓦さんは毎度々々敵の弱点を表示する便利アイテム扱いなんですかね。どうでもいいけど語尾が「オニ」なのは何となくドテラマンを思い出したりするが、オニゾウさんの「オニ」語尾はCMでしか聞いたことないワシでして、そこら辺はもうめんどくさいので検索してください。何の話やねん。


閑話休題。主人公のアルマさんはパッと見ィは孤高の一匹狼っぽいのだが、それは彼が自分の力で他者を傷つけることを恐れていることが原因であり、本来は割と思いやりアリな人なんですよ、ということが示される。ルリお嬢様の姉の病状(だか何だか)を見て、即座に「戦うよ」と決断するってのがそういう意味なんだろう。…が、この台詞の直後にスカイダイビングやってもらいます! えーやだ怖いよー! っちうシーンのギャグにされちゃうのが悲しいやらオイシイやら。さらに007ばりの無落下傘降下やらかして「パラシュートは!」「そんなもの必要ありません!」っちう流れに繋げるのもなんか上手かったな。


うん、割と楽しんでますよ。次回予告の紫のヘンな人にも期待しよう。


●新番組・神様のメモ帳。詳細は知らず、ラノベ原作とのみ。桜美監督ならちょっと気になるので見てみようかな、ってとこで。んで本編のお話は、地方から東京へ転校してきた地味な少年が「ニート探偵団」なるヘンテコな組織に関係するまでの第1話、である。主人公ナルミさんの造形や立ち位置、舞台設定、どちらかといえばファンタジィよりはリアル寄りでミステリ/サスペンス指向のお話作り、って辺りで「デュラララ」を思い出す。まァ(今のところ)超常的怪異は出てこないようですけれどね。


奥手で少々ニヒルも入ったナルミさんであるが、彼の狭い世界にずけずけと入り込んでくるお節介少女・アヤカさんによって、何やら特別な物語へと組み込まれてゆく状況である。ダメな高校中退パチプロ、ダメなミリオタ、ダメなジゴロ優男、と見るからにダメっぽい組織の長はアリスと名乗る少女。事件を解決するその段階までモニタ群の前から動かず安楽椅子探偵としてふるまい、いざクライマックスとなると黒装束に身を包んで出陣する、ってのは京極堂的ですな。流石にあそこまでの精神と肉体の根幹を揺さぶるようなギリギリさは無いですけれどね。


全体的に地味ながら丁寧な仕上がりの作品。初回1時間のスペシャルであり、上記のとおりお話としては少々ゆるい雰囲気ではあるが、各登場人物の紹介編としては判りやすい構成ではある。今後キャラが立ってきたらもっとオモロくなるかもしれない。んで小倉唯によるニート探偵アリスさんの声ですが、かいらしくて雰囲気あってよろしいものの、衒学的で皮肉調子な長台詞にはちょいと苦しい時があるな。ちんちくりん安楽椅子探偵として前期はゴシックちゃんが居ましたが、まァ…似たようなアプローチでは面白くないでしょうしね。この辺は慣れかもしれない。


アリスさんのぬいぐるみの名前「モッガディート」ってどっかで聞いたようなと検索したら…ああ、ティプトリーでしたか。それでお名前がアリス(ティプトリーの本名)なのね。あとこっちでもドクペが。関東のお人にとって「ちょっと変わったキャラ」を付与するアイテムとして判りやすいのかしら。


うーん、全体に地味で薄味ながら雰囲気はキライじゃないな。ちと見てみましょう…タルくなったら切っちゃうかもしれまへん。すんませんねえ。


青の祓魔師・13話。あ、OPEDが変わったってことで2クール目か。本編は特に大きな区切りというワケでもなく、山田改めシュラさん担当回。彼女はバチカン直属のエージェントにして藤原お父んの弟子であり、サタンに関する諸々を処理するという密命を受けている…と同時にお父んからのお願いも彼女の心の裡にある。さて、サタンであり師匠の息子であるリンさんをいかにしたものか…というお話。


リンさんとの戦いを通じて師匠の意思と息子の決意を感じ取り、現在の状況をとりあえず認めるに至るという定番の流れなのだけれど、やっぱその…毎度ながらいろいろと甘めではあるのよね。戦闘者ではなく息子としてのリンさん(その象徴が「笑えるだろ?」という文言)という解題もそうだし、あまり真剣みの感じられない殺陣にしてもそうだし。多分これは意図的に突き詰めていない、のではあろうね。必要以上に重苦しい雰囲気にはしないという演出意図の表れというところか。…ちょっと物足りない気もするが、まあ全体の雰囲気バランスからしてこれが正解か。


にしても、身罷ったあとも何かにつけてお父んの存在が鍵になることが多いなあ。エエキャラだってのは判るけど、あまり出ずっぱりだとありがたみが薄くなってくるような気はするぞ。大丈夫か。