無題

●進化ってのは別にそんな賢いものではなくて、手近にあるありあわせの戦力で目先の状況をなんとかする、というのが身上の現象である。例えばヒトの姿は二脚二腕の直立状態だが、これとてたまたまこういうシェイプになったに過ぎない。無論前肢がフリーになったことが飛躍的な大脳皮質の発展を促し、それがヒトをしてヒトたらしめている重大な要素であるのは間違いない。


問題はマニピュレータとして前肢を使ったことが本当に最善であったのか、だ。本来四脚歩行の方が安定度の面からも速度の面からも優れた機構であり、確かにヒトは二脚で大層な安定感と自由度を両立させてているものの、それを実現させるためには構造や制御系に余計な負担や過度のリソースが発生している。要するに、この体勢には無理があるのだ。


もし仮に、ゾウの鼻のように四肢とは別の部位をマニピュレータとして使えるのならば、そちらの方が問題は少ないだろう。安定度も速度も得られるし無駄に前面投影面積が大きくなることない。つまるところケンタウロス体型だが、ケンタウロスには動物部分と人間部分、二つの胴体があるのが少々無駄と思える。四脚動物の前肢肩辺りからさらに一対の作動腕が生えている、そんな寸詰まりケンタウロスのような体型がベターなのではなかろうか。


ならば二脚歩行体勢が全てにおいて劣っているかというとそうでもない。一番の利点はその占有面積の小ささだろう。上下に長く前後左右に短いヒトの体は、単位面積当たりに存在できる個体数で言えば同サイズの他の動物に比べて図抜けて大きな数値を有する。ある群れがコンパクトにまとまって行動することができるのは大きな利点であると言えるだろう。


●…ちゅーてなことを、満員の通勤電車の中で思ったのさ。コレがケンタウロス型生物だったら地獄絵図だろうなーちうてねえ。ああヒト体型で良かった良かった。んー、あとは電脳化による物理体躯の消失だな。通勤電車はもっと楽になるな。あと喰っても太らないしな。うん。