酒と季節とおっさんと

●つい二週間前までは暑い暑いと言ってたが、やっと秋になった。十月入ってからも最高気温が三十度あったって時点でちょっとどうかとは思っていたが、かく涼しくなりけるのならば良い。折角喉元過ぎたのであるし許してつかわす。


気温もそうだけどやっぱ空が高くなったよね。明らかにこないだまでとは様相が異なる雲たちであって、見ているだけでも清々しくなる。残念ながら秋の日は鶴瓶落し、もとい釣瓶だ、ホンマあっという間に日が傾くのであることだなあ。三時過ぎたらもうちょっと日が黄色っぽいよ。こういう「日の短さ」ってのも、秋近辺に物悲しさをタッチする理由の一つだろうな。…冬になったら物悲しいの何の言うてられへんからね。寒いので。


●てなこと思いつつ夕暮れの道を自転車で帰ってたら、いきなり脇の路地からおっさんがまろび出て来たので思わずすっ転びそうになる。危ねえ、ワタシもボンヤリ空を見てたのが悪かった。思わず「すんまっせん!」と言ってそっちを見るが(こういうとき瞬間的に謝っちゃうのがワタシの気弱なとこでして)、おっさんはそのまま塀んとこにへたり込んで返答も反応もなし。あちゃあどっか傷や怪我でもしたかとキモを冷やしたが、右手にもってたカップ酒をチビチビやりだしたのでホッとした。ああ酔っ払いさんでしたか。…ってまだ夕方だよ? パッと見ィ家無しさんでもなさそうな風体なのに、この時間からぐでんぐでんですのか?


なんか知らんがそのままほっぽらかして去ったけど、大丈夫かいな。…でもワシ、あそこまで酒を呑めるってのはちょっと憧れがあるんだよな。酒自体はキライじゃないのに、身体が許してくれるキャパが小さいのだ。えー辛口一献だっけ、あの六平直政ッさんがクァーって酒呑んでるCM。あんな呑み方できたら気色ええやろなあ。いや、道端でへたり込みたくはないですけどね。