ハコヅメ/平家物語/ルパン三世

●ハコヅメ・最終話。連続暴行犯、その決着。シリーズの終わり話ってことでかなりマジな犯罪者が出てきて、そりゃ警察の話だから当然なんだけども、普段のコメディからギャップがあってこれはこれで効果的ではある。それまでなんとか無難に当たり障りなくお仕事したい、という描写だった川合さんが、ここにきて積極的に「この事件は私たちが参画したい!」と切望するに至ってんのが進歩なんだろうなあ。あと自動車による尾行時の細かいネタとか、こういうのはへえーってなりますね。面白い。

総評。人気漫画原作の警察官モノであり、過不足なくアニメ化されている作品だと思う。思うのだがその過不足の無さがどうも物足りない。贅沢な不満であることは承知の上で、どこかイビツな…とは言わんけども、フックとなるようなちょっとした「異形さ」があると良かったんだけどな。作画的に突出しているとか演出が妙だとかテンポが良すぎるとか、そういう引っ掛かりに乏しかったので割と当たり障りのないお仕事モノに留まってたのが個人的には残念。重ねて言うけど、贅沢な文句です。

単にオフビートなコメディってだけじゃなくて結構重いテーマの話もあって、そこら辺はよろしかった…というより、こっから先の展開でそういうのがどんどん出てくるのだよな。今回の1クール尺だとどうしても顔見世興行というか、イントロで終わっちゃったって感じはある。2期以降があれば…まあ、私が見るかどうかは判りませんけれども。

ともあれ、ちゃんとしたデキであったことは間違いない。毎週楽しんでみてたしね。うん。

平家物語・最終話。壇ノ浦、平家の退場、その後。穏やかな都の様子とゴリゴリの戦いのカットバックだが、場が海なのでどこかしら透徹した美しさがある。板子一枚下は…極楽浄土か竜宮か。この時代の海戦って、ドラマでもなんでも俺あんまし見たことないので面白かった、っつーか流石に凝った絵作りしてんなあ。入水に至る芝居も細かい。…生き残って「しまった」徳子は、びわとともに祈り、語ることで平家を残すことになる。諸行無常も、そう語ることで何がしか残る。そういう話。

総評。とても気合の入った作品であり重厚なパワーのある作品なんだけど、やっぱどうしても…ねえ、尺がねえ。いかに中だるみがあろうとも、この語るべき内容ならば2クールは欲しかったなあと。日々の積み重ねも不穏な予感も、滔々と流れるような大河ドラマ的な感覚があったればこそというのはあんだよね。どうしても駆け足になってしまう、その要素たちがどれもこれも惜しいな、と思ってしまった。あんまし詳しくないだけに、もっと見たかったなと。

あとはまあ、悠木碧すげえな。この話やるなら避けて通れない琵琶の語りをちゃんと、作品のキモとして成立させるだけのパフォーマンスをやりきったってのがすげえ。この一点だけでも作品作った甲斐があったとは思う。…ともあれ、このクォリティの作品を1シーズン楽しめたのはエエ体験でした。犬王はどうだろうかな、こっちも楽しみ。

ルパン三世・最終話。女たちの人生を操るトモエ先生の目的は、ルパンへの歪んだ愛情それのみ。有り余る強力な能力をしょーもないとも言える一つのことに浪費してしまうという異常さは、シリーズヴィランとして良い造形。また、周到に作られた「オリジン」よりもその後上書きされた経歴こそが本質となるというギミックも、シリーズへの自己言及的であるけれども悪くない。願わくばもうちょっと、Bパート全域総合として丁寧な伏線があると面白かったんだけどな。京極夏彦の絡新婦とまでは要求しないけども。

総評。このキャスティングの座組となってから…第4シリーズから3作目、小池健の関わった作品も含めるとそれ以上になるけどそれは一旦横に置いといて。長いスパンの構造があってその間に単発ネタを盛り込む、という構成は4・5シリーズに似ているのだが、どうしたことかそれらの前作よりどうも魅力が薄い。

1クールの「ホームズ」話、少々薄味の話ながらホームズのキャラは割と面白いし牽引力はあった。俺、どっちかっつーと作品の根幹話よりフィラー話の方を好んでしまう傾向があるんだけど、このアークに於いてはメインのスジの方に魅力を感じてしまった…というより、単発フィラー話がどうもよろしくない。そりゃ俺がファンだからという重大な贔屓目があるのは承知の上で、押井守の担当回が上位の面白さになってんのは問題だと思うよお。上記の通り第5シリーズが構成としては似てた上におもろかったので、言っちゃ悪いがこれは監督の各話管理具合がおれの好みじゃなかったってことなんだろうかなあ。

2クール目のギミックは「女」だけど、これも上手く生かされてたなとは言いづらい。シバリが女であるということにガッツリした必要性があんまり無いんだよなあ。トモエ師がそういう能力を使うからってのは物語上の要請、まず女シバリありきの後だしね。…これが上記の小池健による作品なら、とふと思う。猥雑さと陰のある、ダークなトーンで描かれた女性たちならどうだったかな。そういう意味で、表現形式と内容にちょっと齟齬があったという気がせんでもない。

ともあれ、この座組・フォーマットでの定着はいいんじゃないかなとは思うので、また何年後かに第7シーズンでもやらかしてほしいなとは思います。つーか、メインのキャストが今もう60代だもんねえ。やれるうちにやっとかんと、という思いはある。なあ次元さんよ。