夜は短し歩けよ乙女

●録画してあった「夜は短し歩けよ乙女」をやっと見る。他者に対して無私の幸せを無慈悲に撒き散らす完全で完璧でおまけにうわばみな黒髪の乙女が、一つ「風邪」をひいて人としての不完全性を手に入れて人たる存在の先輩の許に降りる話。…まあその、劇中にて何もないすっとこどっこいの象徴として描かれる「先輩」が実際のところ、能力と好機の双方において真っ当な星の下に居たからこそですよってのは、四畳半神話大系と同じくしてのことではあるんですけどね。そんなお二人さんの…、俺的にはともかく世間的には凡百の一である関係性を京都(≒世界)の危機として描く。セカイ系的な内向韜晦と真逆なフルスイングが気持ちいいことではある。心の奥底にこびり付いたある本への偏執が一つの軸になる辺りがあざとくて憎たらしい。俺にとっては佐藤さとるの「誰も知らない小さな国」だが、誰しもそういうのはあんだろなあ。

とかそういう、自分の心の柔こいところの話もいいけども、やっぱハヌキさんと樋口師匠の関係性があまりにもかっこよすぎてたまらんなあ。このあとフツーにくっついてもあれこれあって別れても、下手したらずうっとこのまんまでもあざとかっこいい。二人のかっこよさのベクトルがなんかちょっと違うあたりもかっこいい。俺のような人間には到底とどかない、でもこういう人居るなあ…って感じのかっこよさ。

キャスト、星野源の先輩は全く問題なし、キャライメージそのまんま。樋口さん、藤原啓治から引き継いでの中井和哉は本当にテメエを見せたと思いました。あとパンツ総番長の秋山竜次はすごかったです。とまあ野郎連中もいいんだけど、やっぱ乙女の花澤香菜が抜群にいい。あっけらかんとして常に前へ進む、おともだちパンチの権化みたいなキャラにベストマッチでしたよ。んで作画的には何一つ文句がない。圧倒されっぱなしで胸焼けしました。後半の大スペクタクルもいいけど、前半の乙女の酒飲みシーンとかがなんかすげえ響いた。全体的に、とてもたまんないアニメでした。よろしい。