波よ聞いてくれ

波よ聞いてくれ・最終話。前半のちょっとしたドラマ・クレコさんに対するミズホさんの思いやらタチバナさんがなんかはがき職人だったらしいことと中原君のニブカンぶりとか、そういうのを経て後半の大仕掛。デウスエクスマキナとして北海道の地震を置き、なんかこう…エエ話風にまとめちゃったのが力業ではある。災害時におけるラジオ屋としての矜持、その状況下にてミナレさんはいかに自分のプロ意識に向き合うか。クライマックス、それまでの登場人物が同じ空を見上げつつ聞く坂本九の「見上げてごらん夜の星を」が実に効果的で、これは映像と音が同期するメディアならではの組み合い具合だなあと思いました。

総評。大人主体のドラマながらアクションでもロマンスでもない、割と独特のセンスでお出しされる…コメディというか何というか。どっちかっつーとアニメよりも深夜ドラマが似合いそうな感じで、実際そのノリをアニメーションで制作するには結構な手間がかかっている。そういう意味で、なかなか贅沢な作品ではある。いやもうホンマ、すぱっと「こういう作品!」と評するのが難しいアニメだなあ。序盤感じていたように私の生活世界とはほぼ関りのない題材・キャラクタだらけなので、アリネタ的な共感も寄せにくいし。

そのように自分から離れたところにある作品なのに、ここまで面白く見ることが出来たってのがまず物語の地力なんだろうね。登場人物どいつもこいつも癖がありまくるんだけど、その中でまったく埋没しない主人公・ミナレさんのおもしろ女ぶりが輝かしい。CVの杉山里穂さんをあまり存じ上げなかったんだけど、ギャラは他の人の倍くらいもらっていいと思う。熱演です。

物語的には割と中途で、そこここにチェーホフの銃が掛かったままみたいな状況だけど、まあここで終わってもその銃の群れがなんとなく作品の味わいになっているって感じはするので、あまり消化不良感は無いかな。でも見られるならこのフォーマットでの続編も見てみたい。うん、面白かったですよ。個人的には回想と妄想シーンにしか出てこなかった、沖さんの謎の彼女が見てみたい。ホンマにロシアのスパイだったりしてね。まあ、そんな感じで。