銀齢の果て

筒井康隆「銀齢の果て」読了。もうすごく単純に「老人バトルロワイヤル」である。ホントにそれ以上でも以下でもない、作品中に社会風刺や主義主張もあんだけどそれは単にジジババ殺し合いというテーマのための補助部品に過ぎないという、いつもの筒井作品。基本設定も極力単純、ツッコミどころは大量にあるけど「いやそういうしょーもないリアリティ要らんし」とばかりにほぼ無視し、その分のリソースは戦闘や感情の描写に充てている雰囲気。

これ書かれたのが作者70歳の時、流石に表現や文章にちょっと古臭いとこもあんだけど、当たり前すぎることながらすっげえ文章が上手いんだよなあ。いや筒井作品に今更それ言うの!? ってとこですが、こういう雨後の竹の子ジャンルの作品で「文章が上手い」ってのがなんかそれだけでちょっと面白かったりする。

地区一つ分(とそれ以外の箇所の描写も少しある)の老人バトルってことで結構な数の登場人物が出てくるんだけど、文中にぱらぱらと山藤章二のキャラ絵が挿入されてるのがなかなかいい助けになってますのね。ワシやっぱビジュアル込みだといろいろ覚えやすいようだ。「あーこのキャラはワシならこういうデザインにするなー」とか思ったりして、そういう楽しみ方もあるわね。あと序盤に主人公たちの会話で各キャラのパラメータ談義があって(こいつは武力5、知力4、財力1とか)、それはその場に出てくるだけの要素なんだけど、見てるうちに「こいつは武器込みで武力4程度かな」みたいに想像できるのも面白い。これまた当然だけどキャラの立て方に抜かりはないですしねえ。

面白かったし、これは映像でみたいなとも思った。映画一本分くらいにいい分量じゃないかしら。演出的にも映像メディアっぽいところがあって、章立てとかがなくて場面の切り替わりやつなぎがモンタージュっぽいのね。でも映画とかだとまず、こんなけの老人俳優をキャストするのが割と大変かもしれんな。