昭和元禄落語心中/鬼平/オルフェンズ

昭和元禄落語心中・11話。八雲のマジモン地獄八景亡者戯。その道中の陽気なこととか近日来演(いや本日だけど)とか、割とちょこちょこネタ拾ってきつつもしっかり落語心中しているというかなり精度の高いネタですな。初めのころは「あの世とかなんとか言うよりも八雲自身から出たシーケンスが連なってるんじゃないかしら」とかも思ってたけど、話が進むにつれてそういうことはもうどうでもよくなる。憑き物落ちてざっくばらんなみよ吉といい、反対に生前そのままにダメで調子よくて落語の申し子の助六といい、最後の最後にこんな出来事がもちゃがって良かったね八雲師匠、と思わずにはいられない。

意志の力でテメエの姿年齢なんぞどうにでもなる世界。さあ高座に上がって一席聞かせてくれい、となった八雲師匠が選んだのが老境の姿、ってのがなかなかゾクッと来る。彼にとっての最盛期、全盛期はこの姿なのだ。ああ、こればかりは助六の至れなかった境地。そしてこの姿でやる演目ってのが寿限無、それを信之助と子供小夏に聞かせてやる…ってのがどうにも参る。んでこの高座の助六と八雲…山寺宏一石田彰が本当に素晴らしい。毎度のことではあるが、演技でちゃんと「希代の落語家」を提示できるってのは大層なものである。

そして師匠は川を越え、茫洋と明るい世界へと行く。最後に見送ったのが松田さんってのもサプライズだが、これうとうとしてる時に夢として垣間見た時間、って感じだろうか。…いやあ、これまでの八雲の落語人生物語のシメ話として、もう十二分の強さがあって良い話だった。惜しむらくは与太さんの印象が割と薄かったことだけど(名前だけはチラッと出ましたか)、あまり心配もしてない弟子ってのはそんなもんかもしれない。ともあれ、堪能しました。

鬼平・10話。録画ミスで他の方法で視聴するも、あれ、特に前回の後編って感じでもないなこれ。回想メインのお話って以外それほど繋がりは無い感じ。アニメ化に際して再構成されたってことでしょうかね。ともあれ、今回は盗み細工の巧者が自分の知己を陥れた男に復讐する、とまあそんな話。…幼い娘にお話せがまれて、それと言わず別れた息子が姦計により首つる羽目になってその育ての親も入水して果てる、という物語をやらかすってのはそれ、平蔵さんちょっとロック過ぎやしないか。お順があんまり興味も無くすぐ寝ちゃったのが幸いというか妙に図太いというか。そら奥方も「殿!」とたしなめもしますわな。

復讐果たして相手の商家の証文を廃棄することに成功し、証文反故の吹雪と大量の小判の輝きの中息を引き取る盗賊・泥鰌の和助。ラストシーンのどうかしたんじゃないかっていうくらいのファンタジー風景は、アニメの演出とはいえやりきったなーって感じでなんかおもろかった。ま、復讐成功ってったって4年後に店がつぶれる、ってくらいだから控え目(?)なもんですけどね。

和助に筈見純、またシブいトコ持ってきたなー。アニメで声久しぶりに聞いたよ。そして「気のいい中年夫婦」役で屋良有作久川綾なんだもんねえ。改めてえらいアニメではあるな。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ・48話。追いつめられた鉄華団にはもうあまり選択肢は無い。オルガはここで「逃げて生き延びる」という手を選択し、いくつかの幸運やマクギリスの行動もあって脱出への「道は開けた」のだが、その道はどうにも細く、か弱いものである。それでも進むべき方向があるならばそれだけで団員の行動原理にはなる。気分の問題かもしれんがいささかなりとも光明が見えた、という状況。…あーこれは上げて落とすの典型パターンやなーまずここで出鼻くじかれる展開やろなーとか思てたらオルガが死んだ。というお話。

全員生き残ることが命題であるとしといてまずその頭が死んでしまう、という流れはショッカー展開として十分であるし、また「ああ、これは誰がどうなってもおかしないな」という雰囲気を醸成する効果もある。俺たちには目的地は要らない、ただ進み続けることさえありゃいい…とひとりごちながらあさっての方向に数歩進んで斃れるオルガ、というラストは象徴的だ。要するにこれ、鉄華団まとめて破滅に向かってまっしぐらでも成立するもんねえ。それで鉄華団本人たちがどうなろうと、その後の世界や後代(ミカの子の世代)に変革があるならば彼らの存在には意味がある、と言えてしまう。ここではないどこか、ってのはつまり、「ここ」から動き続けることを強いられている文言なのかもしれない。

アトラさんがミカの子供を宿してると聞いて「うそん…」って感じのチャドが可笑しい、つまりもうこういう役どころやねんね…と思ってたらラストで撃たれてるし。いろいろ大変やなこの人も。