昭和元禄落語心中

昭和元禄落語心中・6話。倒れた八雲を巡って右往左往のご一統、姐さんは救急車で八雲と一緒に病院へ。ならば助六は…ってェと、おぼつかない手で客席のほうを指す。落語を待ってる人が居る、ってワケだ。未だ憔悴覚めやらぬ状態から、出囃子鳴って顔を上げるとスッ、っと顔が変わる。そして大いに演ずるのが居残り佐平次のご一席…という話。

願望欲望や人の意思、そういった要素の塊である佐平次においてでさえ自分が消えて「落語」そのものとなる与太助六さん。樋口先生の言うとおり、ここまで来ると八雲・先代助六にも比較してまた別の峯と言ってもいいのかもしれない。…前も言うたかしれんけど、与太さんって何度かトートロジーみたいなこと言ってんだよね。大工は何故叫ぶのか? 叫びたいから。何のために落語をするのか? 落語のため。彼にとって、問題とか課題なんてのはそれ自体に答えが内包されているものなんだろう。そこに至る道を論理じゃなくて好き嫌いで見つけてしまう。…確かに、これはひとかどの天才である。同時にこれを弟子(あるいは樋口先生)に伝えるってのは難しいことではありそうだねえ。

さしあたり、八雲師匠は一命を取り留めている。いろいろ引きずるお人だし、このインシデントが彼の落語と人生にどう影を落とすことか。そうねえ、どうしてもジメッとしたものにはなるだろうねえ。そこら辺は与太と姐さんがちゃんとケツもってあげて欲しいところだが…どうなることやら。