舟を編む/ドリフターズ

舟を編む・最終話。大渡海は完成するがそこに松本先生の姿は無い。しかしその精神は先生から荒木さん、マジメさんへと受け継がれてゆく。言葉の海を渡る旅は永遠に終わることのない営みであり、それは次代へ次代へと引き継がれる生命そのものと言える。…見舞いに行ったときの先生の、ああこれは小康状態なんだなと判る演出が繊細かつ容赦ない。あの「手」の描き方とか、上手いよねえ。

どちらかというと辞書を相手にしてはワキに回りがちな西岡さんだけど、そういう営みの一輪としては充分に必要な存在であると判るのがよろしい。プレゼン会議の直前というあのタイミングで松本先生の死去を知り、それでも我が頬をはたいて会議に望むあの姿がかっこよい、のだろうな。

あと今更ですが、松本先生の奥様って横尾まりだったんか。相変わらずキャスティングがガチガチですな。ちうか横尾さん、コンスタントにお声の仕事してはんのねえ。なんかエエね。

●総評。辞書を編纂するというおっそろしく地味な話しながら、流石本屋大賞作品だけあってソツなく面白い。なんてことない市井の仕事だけど、そのストイックさはお話として絵になるなあってとこですな。判りやすいケレンやハッタリの少ない中で、言葉の溢れる海と並んでカグヤさんのイメージが飛びぬけてドラマチックなのは、マジメさん視点のお話だからだろうけれど…このちょっとした幻想的雰囲気は、話の様相によくマッチしてたと思う。

作画においてもそのストイックさ、丁寧さはよく発揮されていた。一話から「なんだこのめんどくさい上に微妙な動かし方は」と思いましたけど(けなしてませんよ)、全編その雰囲気とクォリティで通したのは大したものです。あとは上でも書いたけどキャスティングね。演技派ぞろいの手堅いラインナップは安定感ありすぎ。榊原良子の地味なオバハンとか、もう絶滅危惧種に近いぞ。

全体にとてもノイタミナらしい、堅実な話だったなと思う。こういうのばっかりだと少々枯れすぎだろうが、やっぱコンスタントに作り続けられて欲しいカテゴリのアニメだよなあ。それこそ辞書編纂の如く、連綿とね。てことであまり文句もございません。面白かった。

ドリフターズ・最終話。オルテ首都ヴェルリナ攻防戦…というよりは落ちかけの町をドリフとエンズで奪い合いという図式。全体の趨勢は信長の戦略ネタで、その象徴的な先端部を担うのが豊久VS土方のサムラーイバトル、って構造っすな。ノブさんのシーケンスではこの世界初の銃によるアサルトシーン、溜めて溜めての大爆発がなかなかに爽快。そしてサムライの方はアクション満載、これまた見所になっておられる。

豊久と土方、それぞれの性格や立ち位置の違いがよく判るバトルでありました。まあお話上しょうがないとは言え、土方さんの「士道」という精神性に一顧だにしない豊久さんがそりゃカッコいいよね。あんなけ人外バトルしといて最後は紅の豚みたいに殴りあい、退却する時に「サムライって言われた…」つってちょっと嬉しそうな土方さんがチョロい。

お話はなんとなく一段落ではあるがちっとも終わってない、のはまあ原作の都合上しょうがないところ。次シーズンへの目配せボーナスとしての明智光秀速水奨。確か速水さん、以前も光秀やってたりしたよね。そういう雰囲気をアテられてんでしょうかしらね。

●総評。異世界を舞台に歴史上の有名人が巴戦の大バトル、という判りやすいお話。ワールドバトルというにはちょいと日本キャラに偏りすぎではあるが、まァ作品で描かれた別のとこでは別の人が戦ったりもしてんでしょうかね。1話に出てきた米兵さんとかね。んでまあ上でも書いたがものすごく話の途中なので物語全体としてどうこう、ってのは流石に言えない。けれどもこの作者らしい過剰なハッタリとクセのある風情はかなり十全に再現されてて、ファンからしてもあまり文句のないデキだったんじゃなかろうか。

特筆しときたいのはキャスティングで、ベタなチョイスから球半分ズレた辺りに放っといてそれが大正解という、この配役はちょっと興味深かった。入念なオーディションの賜物か監督・音響監督のセンスか、あるいは他の要因なのかは知らんが実に目を引くよね。事前に信長のキャストを予想した人は多かっただろうが、内田直哉の名を挙げた人が果たしてどれくらいいたか。んでアテられてみりゃものすごいハマり具合。…ま、義経の石田とか与一の斎賀とか「そのまんまじゃん」という枠もあるんですけどね。

一応次シーズンもありますよーってな雰囲気にはしてるけど、さていつのことになるか…そもそもホンマにできるか否か。20XX年、と下二桁がペケになってる辺りほぼ何も決まってないのは明白ですけどね。ま、作られるならばゼヒお付き合いしたいところですが…なるべくなら内田直哉が元気なうちにね! お願いしまっせ!