シン・ゴジラ

●休み取れなくてストレスフルな毎日、やっと取れた休みを有効利用しようとして仕事帰りにシン・ゴジラ見てきた。とても面白かった。無論カンペキな作品ではありませんでいろいろ言いたいこともあるんだけど、その辺含めても満足いたしましたよ。以下多分すごくネタバレする。

言いたいことで始めますとまず、自衛隊や官僚に比べて明らかに制約が大きい「かの国」の描写、ホンマはもっともっともっと描き込みたかっただろーなーと思ったりする。あとクライマックスの戦意高揚演説とか、あの辺ちょっとジメっとしててクサいなーと思ったけども、いろいろ乗っかってきてるゴジラ映画だしその辺はしゃーないかなと。

一番気になったのはやっぱアレやね、中盤と後半のバランスやろかね。半ばのゴジラだいかつやくシーンは本当にスゴくて、それまで「うんうんなるほど庵野と樋口はこういうゴジラ映画見たかったのね判る判る」と視点を引き気味に多少の余裕を以って見てたのが「あ、これはヤバいヤバい…マジだこれ」と視聴のレイヤを引き下ろされる、そんな負のカタルシスが大量に溢れててここだけでも体験の価値がある。そこまでの破壊描写が「ああこれは津波報道で見たよ」「これは地震映像で見たなリアルだ」というノリだったのがいきなり「あっ…これは破滅モノSFアニメで見た…」ってな絵がまろび出てきてドン引き、という寸法だ。

しかしそのゴジラに対する対抗作戦、これがいささか熱量が見劣りしててさ。いやここ単体で見れば燃えるわ手に汗にぎるわ電車がかわいそうだわでカッコいいんだけど、いかんせん比較対象の中盤シーンが分厚すぎるというか。ネタバレ濃厚に描きますけど、「凝固血清みたいのをゴジラにブチ込む」ってなシーケンスで経口投与なのかよ! というね。口に入れるはいいけど嚥下は相手任せになっちゃうけどいいのかな、という。その布石として周りのビルぶっ倒して押さえ込みかけるのもちょいとご都合が強くて、いや「確率は低いがこの作戦にかけるしかない!」ってのは前述どおり燃えるんだけど、米軍の核に対抗する作戦としては弱すぎる気がするんよね。…あと経口投与されてるゴジラさんの絵がどうも「弱った患者を手当てしてる」風景を思い起こさせたり。薬液を弾頭にした特殊ミサイルとか一時拘束する為の超張力ワイヤとかのSF兵器的なものを廃した結果なんだろうけどねえ。

多分、上記の都市破壊シーン、まずあの「絵」が製作者の中にできちゃったんだろう。あーこの絵を撮りたいなー、これ見せたらみなビックリしよるやろなー、という。そしてそのモチベーションはすごく正しいと思う。後半ちょっと物足りなくなってしまっても、だ。そういうモノが世の中にはあるんだろう。

ま、諸々文句はあるけれど、それにしてもいやー…おもろかった。だからいろいろいいやもう。とにかくサクサクサクサク進む物語(なのに俯瞰してみると後手に回っているというムツカシさ)とか、アポロ13とかで見たようなはぐれもの専門集団の活躍とか、当然中盤の大暴れシーンとか、見たいものをそのまんま提示していただける幸せってあるよなーと思いました。うん。

あとランダムにいくつか。●特殊状況下での群像劇とかキーパーソンが既に死んじゃってるとか、押井…というよりはパトIIを思わせるノリは素直に楽しい。テーマ的に押井が描きそうにない作品なのが更に面白い。まあ話の流れはエヴァラミエル戦なのですが(音楽もそのままDecisive Battleだし作戦名ヤシオリ作戦だしね)。●走る自動車から電線ナメでゴジラを見上げるシーン、これはガメラIIのセルフオマージュというかリメイクシーンだろうな。ガメラでもすごく印象的な絵ではありました。●「成長」というのがキーワードの一つで、ゴジラもそうだし日本もそうなんだけど、ただの成長じゃなくスクラップアンドビルドなので各々一旦えらい血ィ流しちゃうのである。その中では大杉漣総理の成長っぷりがなかなかおもろかった。結局ああなっちゃうけど。●いろんな兵器でてきてかっけーなーとか思ってて、あとであれもこれもCGと知ってへえと思った。コブラとかはいかにもそうだろうなとは思ったけど、あの行進間射撃してる10式もそうだったのか。いや考えてみりゃぽんぽん主砲撃ってるとこマジ撮りさせるワケないんだけど、かなりリアルだったからそういうとこ頭から抜けてたよ。●こんなすっげえ迫力の絵に、モノラルのゴジラ音楽とどっかで聞いたようなSE付けちゃうのが庵野さんだよなあ、と。ズシーン音なんかほぼウルトラの世界だぞあれ。●スタッフロール、庵野秀明の名前何回出てんの…つーか監督くん一人で何やってんの…。●映画本編の前に予告いろいろ流してたんですが、ナレーションの山寺宏一率高いな! ある意味これは彼の、世界に対するリベンジとも言えようて。