フーコーの振り子

ウンベルト・エーコフーコーの振り子」読了。これもだいぶ前にいっぺん読みかけてたんだけど挫折してたもの。今回改めて読んだらなかなかおもろかった。前回のつまづきはごく序盤、主人公のカゾボンさんがパリ工芸院に潜んでいろいろ怯えてるあたりのあまりの退屈さとワケ判んなさによるものだった。実際再読してもその通りなんだけど、ここを越えると一気に難読性は下がる。何を見てもオカルトの妄想にしか解釈できず、それが重層的に妄想で繋がってゆくという…「めんどくさい主人公だな」って感じなんだけど、序盤が終わって本編の回想に入ると本来はこの人、至って常識的なオカルト観の人であることが判る、という流れ。なんかヘンな言動の人がそうなった理由が後で出てくるってので、何となくシュタゲとか思い出した。鳳凰院さんのあの痛い言動みたいなん。

大量の薀蓄と衒学性がこれでもかと盛り込まれた話ながら、スジ自体はあまり入り組んではいない。オカルト野郎どもの持ち込みにうんざりした主人公たち出版社の面々が、ほなコッチから迎え撃ったろかいなと壮大なテンプル騎士団のオカルト絵巻をでっち上げるのだが、そうこうしてたらその虚構がなんとなく現実を侵蝕し始めてまへんか…? ってなところ。いかにもソレっぽいオカルト話の構築が見事で、よう調べたなあこんなことと感心しながら読んでました。

本編中いくつか日本文化への些細な言及がいくつかあって、「ナ・ヌー、ヨユワンワ」という方言ってのもこれ日本語じゃんなあ、こんなんまで調べたのかエーコ…と思って検索してみたんだけど、少なくとも英訳版にはこの辺の単語は入ってないみたい。何だろうね、ひょっとして邦訳する際に訳者がぶち込んだ要素かしらん。