ゴルゴン

タニス・リー「ゴルゴン」読了。それぞれ動物やら幻獣やらをモチーフとした短編集。時代もテイストも結構レンジが広く、いろんな味を楽しめるのは短編集のエエトコではあるが、しかしやっぱこの人の表現力、特に修飾語の幻想性はとんでもないものがあるな。個人的にこの人の文章から感じるのは「不安定な美」なんだよね。どこか欠けたりアンバランスだったりといった、そんな様相を有する故にそれだけ切実な美しさがあるような。この人の端麗な文章からそんな雰囲気を感じるのです。

前に読んだ短編集「タマスターラー」の時もそうだったけど、まずこの人/この本の性格をドスンと判らせてくれるからか、総体の印象として最初の作品…、この場合は「ゴルゴン」が一番印象深いものがある。ちょっと古い欧州の映画のような雰囲気と、虚実の境界線が曖昧になったような主人公の心の動き、そしてそのオチ。完成度が高くて少々唸ってしまう。ま、表題作だしねえ。