あげものアドベンチャー

●スーパーの惣菜でパック入りのコロッケを売っている。小さなパックにまるまる一つ、大き目のコロッケが入って120円税別。ところが商品札には「惣菜」としか書いてない。何だろうねこれ。ちょい高めの値段、細長い紡錘状という形からすると普通のコロッケじゃなくて多分クリームコロッケ、だとすれば具はカニかエビかコーンか。でも案外「高級和牛使用の特別コロッケ」とかかもしれないし、「絶品トマトソースのライスコロッケ」なんて線もありえるし、ひょっとしてメンチカツ、さもなくば変わりトンカツ、もしかしてささみチーズ。…そこに居る店員さんに「これ何のフライなんスかね」と聞けばいいだけなのだが、しかしここはあえて何も聞かずこれを買う。そう、多分こんな高揚感、これこそが無記名のタグを打った店員さんの意図したことなのだ。驚き疑って商品を買い、それを食するという種明かしの間まで揚げ物視点から世界への違和感を演出する。そんな非日常を120円でご提供。ああそんな非日常をご提供。

中身はカニクリームコロッケでした。実に日常。