ジッパーと歴史

●服をクリーニングに出し、ついでにズボンのジッパーが壊れているのでお直しできるとこありませんかと訊いてみたら商店街の中にかけつぎの店がありますよと教えてもらう。何かに付けて通ってる商店街だがそんな店あったっけと思いつつ行ってみるとありました。

間口は一間ほど、引き戸も相当年数重ねてるだろうなって感じ。入ってみるとウナギの寝床のような奥に長い間取りで、入ってすぐにカウンター、雑然としたその奥にお爺さんがミシンに向かって作業しており、更に奥にチラ見えしている生活エリアっぽい辺りでお婆さんが掃除機かけてるらしき姿が見え隠れしている。掃除機の音とラジオの声、布地と石油ストーブの香り、昼光色蛍光灯の青白い照明、壁には感謝状だの表彰状だのが数枚ほど。あー…こんな雰囲気の店、あったよなあ、っていうねえ。

とりあえずジッパー修理を依頼し、代金を払って店を出る。そこはいつも見ているワシにとっての日常である商店街の風景なんだけど、それだけにワシの知らなかった世界と歴史がほんの1m横で連綿と続いていたという、その実体例がなんかすげえ面白い。積極的にいろんなところに行く人は、こういう経験をコンスタントに積み重ねてってんだろうな。ま、ワシは一日千秋変わらぬ世界が好きでやってんだけど。そ、さっきの店みたいなね。うん。