おおかみこどもの雨と雪

●こないだ地上波でやってたのを録画しててそれを鑑賞。なんつーか、いろんな意味で繊細な映画やなあと思った。クライマックスに至るまでのトーンの上がり方や、波風山谷あって人生続いていくだろうけどそれ自体が楽しいのだろうという余韻もよろしかったけど、確かにこれは合わん人は合わんやろな、とか。お話上結構生々しいところとファンタジィなところが同居してて、そのバランスが独特ではある。話の生々しさに比べて貞本-山下ラインのキャラデザはフラットな感じであり、このギャップも「バランス」を取った結果でしょうか。

繊細っちうのはあと、カメラフィックスで対象人物の心象や感情が変化するシーンが複数あって、それらの演出が細かいのね。ハナさんがオオカミダンナの正体を初めて知るシーンの風、オオカミ息子の決意が動かないことを知るシーンの雨、オオカミ娘の告白シーンのカーテン。特に最後のヤツ、風になびくカーテンが彼女の姿をシルエットで隠す度にその姿が変わり、しかし最後のカーテンでは「変わらない」で人間のままってのがよろしい。そうでなくても正体を明かすっちう前フリとして、まず窓を開けて嵐の雨と風を舞台に呼び込むって辺りで既にいい。ユキちゃん、自分の見せ方判ってる。

いきなり過酷な状況に陥った主人公のハナさんは、最後まであまり負の面を見せずがんばってくんだけど…見た目に判りやすい強さはあまり無くて、どっか危なっかしい雰囲気のある(だから初めのころはコミュニティに受け入れられにくい)お人だったり。これ、例えば宮崎アニメとかだったらかなりズドンとした芯の強さで描かれるキャラのような気がする。

キャスティングはアニメ業界内外とりどり、メインに俳優畑の人で存在感を付与してワキをヴェテランで固めるという、オーソドックスなヤリカタと言えますかね。中村正と大木民夫のケンカ友達ジジイコンビとか、何気にゼエタクですな。あとソウヘイさんのヒスママ、初っ端では林原めぐみと判んなかった。なんじゃかんじゃで上手いのう。

あーあと、流石に作画的にはカッチョいいシーンが多くてヨロシな。雨の中去ってったアメさんの後を追って車道に出てきて、周囲を見回しつつくるりとカラダを回すハナさんのしぐさが何故か目を引いたっすねえ。すげえ「ありそう」な動きで、かつ不安と憔悴が出てたっすわ。おもろい。