銀の匙

銀の匙・10話。今まで着実に積み上げてきた八軒と豚丼のエピソード、その決着についての話。周囲からあんなけ止めとけと言われてたのに、それでも豚丼に対して個人的な愛着を持って交流を続けてきた八軒さん。そして家畜としての豚丼の行く末を全て受け止めようとしてるのがいかにも彼らしい。食肉として豚丼を購入します、と宣言するとこもそうですわな。不器用だけど、あるいは不器用だから上手いこと立ち回って逃げない。そういう主人公だ。

そのまんまドナドナ状態で連れられてゆく豚丼を見守る八軒。ああ、実際に食肉として処置されるシーンは見せないのか、まあ少年誌掲載の作品としては妥当なことだよな…と思ってたら直後の授業にて豚の加工映像資料を見ることになる。自ら敢えてそれを見ることを望み、そこそこの平常心で受け止めて、その後で元豚丼たるベーコン作成の作業を行い、そして喰う。題材としてちょっとだけ説教くさくもあろうが、しかしキッチリと正面から見据えたドラマ構築をする、それだけでまず評価したいところではある。

取り立てて暗かったり湿っぽかったりはしないように配慮して話運びを持ってってる作品だけど、その表面的ではないニュアンスは様々な所から感じられることだ。今回で言えば中盤の教室シーン、ここが何故かずうっとナナメから光の当たった影と光の目立つレイアウトになってて印象深かったのね。レイアウト作業としてもメンドクサイであろう絵面なんだけど、わざわざ机やイスの長い影を描いている。そういう所で雰囲気を構築してはんのだろな。あとベーコン作りの煙を皆が眺めているシーン、明らかに火葬場のような絵作りしておいた上で登場人物にそう言わせ、しかしそれはよだれたらしてる「うまそう」っちう表情ですよというバランスの取り方もそうやなあ。