進撃の巨人/ヤマト/有頂天家族

進撃の巨人・20話。女巨人を確保する兵団である。巨人側にとっては絶体絶命、兵団からすればさァこいつどないしてやろかいな、ってとこであるが、女巨人は「大量の巨人を呼び寄せて自分を喰い尽くさせる」という思いもよらぬ方法でこの状況から脱するに至る。おまけにその「中身」は兵団と同じ格好をしたスパイであり、巨人確保には失敗するわ内部から組織を切り崩されるわ、とまあ一気に舞台が引っくり返ってしまってさあどうしましょう、っちう話。

基本的には上記の通り「多大な犠牲を払って何とか作戦は成功した、と思ったら全部指の間からすり抜けていく」というフォーマットの話なんだけど、そんな流れにあっても常に最善手と正しい予測を張り巡らし続けるエルヴィン団長が突出していることだ。この作品のこっちゃしいつ死んじゃうかも判らんが、その行動と(少ない)言動で「ああ確かにこら曲者ぞろいの調査兵団が絶対の信頼を置くキャラだわ」ってのを物語的に判らせてくれるヤリクチが上々である。その上で団長とアルミンの言う「捨て去る覚悟」については女巨人に上を行かれてしまう…ってのが非情なお話よな。

この遠征の本来の目的は「エレンさんちの地下室」だったっけか。とするとこの妨害者…巨人側はよほどその地下室に隠したい秘密があるっちうことやろね。兵団としたらこの本来の目的を最優先とすべきであったワケで、女巨人の正体を殺さず明かすというミッションに色目使っちゃって排除に時間を取っちゃったことがミスだったのだろう。ま、それにしたって、アルミンの言うとおり後知恵の正解でしかないし、難しいところやんな。あとペトラさんがおしっこ漏らしてたのはなかなか興奮することである。実に。

宇宙戦艦ヤマト2199・21話。対ドメル戦を辛くも勝利するも、大きな損害を受けたヤマト。犠牲者を宇宙葬したのち、補給と修理のためにさる星系に立ち寄るが、そこはガミラスの収容所惑星でして…というね。この「第17収容所」ってのも元ネタがあるのか。見たことないが、この時代の名作ってのァ今のトシで見るとしみじみ見られたりするからなあ。そのうち見てみたい、ってそういう意識ほど忘れちゃうんですけどね。ま、それはそれとして。

んでまあ、お話としては割とてんこもり。ヤマトの修理はそっちのけ、横暴な収容所長とその叛乱、ヤブと伊東の始末、森さんと再開できるかと思えばやっぱりできないすれ違い、あとイスカンダルガミラスが双子星でしたっていう衝撃の真実も。…あー、そういや今まで知らんかったんだよなヤマトの皆さんは。もうねえ、見てるワシらはあのロシュ限界なんのその、な近距離二重性の絵がもう古典の絵ですもんな。そらしょうがない。

てことで、重要な話ながらちょいとバタバタしたテンポだったかなっちう印象。ガトランティスの囚人たちがいっぱい出てきてたのはおもろかったですけどね。あとガミラス戦車のケツがよく見えてましたけど、何か印象以上にWWIIドイツ戦車だなあ。二つ並んだ排気管はティーガー、あとパンターの雰囲気もちょっとあったりして。

有頂天家族・8話。矢二郎の告白。彼はあの最後の夜、父・総一郎としたたかに呑み、酔い、そして父は金曜倶楽部にて喰われて死んだ。客観的に…ハタ目から見れば、父の死の責任も何も矢二郎には無いのではあるが、当の本人からすればそうは思えまい。だから彼はそれ以来狸であることを止め、ただ井戸の中の蛙として世捨てた生を過ごしている。…全てを聞いた後にお堂で寝転がっている長兄・矢一郎が、その顔が映った初っ端のカットからほろほろと泣き続けているというあの絵がよろしい。彼が、あるいは彼らが、いかに他の家族たちを想っているかが端的に示される。父っつぁんはエライ。お母さんは大きい。そういう家族である。

実にウェットでしんみりしたお話だけに、全編を貫くたっぷりとした間合いが非常に効果的でありますな。矢三郎が人力車の赤玉先生とただ歩き帰っているだけのフィックスショットの、ぐっと持ち重りのするようなあの充実加減。いずこかとも知らぬ夢幻の席にて、赤玉先生と最後の挨拶をする総一郎の堂々たる立ち居振る舞い。もう何だ、これらのシーンだけで1クールの作品を支えて立つくらいのガッチリとした「質感」がある。先生が先生らしいこと言うてんのがレアではあるが、まァ一廉の天狗であるのでそら当然でもありましょうな。

それにしてもこうなると、父が狸鍋に落っこちた真の理由ってのが後編にかけての話の焦点にでもなりそうやな。できればぜひ、下鴨家流儀での阿呆な理由であると嬉しいことだ。あの父が身一つ全てでもって受け止めた「死」ですからねえ。最後に皆さん、救われるとよろしいなあ。