進撃の巨人/ヤマト/有頂天家族

進撃の巨人・16話。調査用の巨人を殺したものは見つからないままである。内部の者、兵士の犯行であるのは劇中描写からして間違いないだろうが、さてこの獅子身中の虫は誰だろうか。まあそれは置いといて、新兵たちは今後の進路を最終決定しようかっちうステージに進む。エレンに感化され、その上で巨人たちの暴虐を目の当たりにした者の多くは最も危険な調査兵団に志願するに至る。さしあたっての作戦は予行演習的なものだが、それでも新兵引き連れての開門描写で次回へ続く、という絵面はよろしい。それが絶望的な、あっという間に仲間が死んでゆくような場所へつながる門であるとしても、だ。

今回は新兵たちが主役の話であり、そしてそれを代表するのはジャンである。肉体的にも精神的にも突出した所はなく、その思考もどこか小市民的な弱点を持っているが、それらの凡人性を自覚しているからこその強みはある。てェか作劇側からするとこういうキャラは必要ですよね。どいつもこいつもエレンやリヴァイのようなハイパワーや超技能持ちばかりの集団では描けない、市井と人間の物語もある。それが理不尽な力に翻弄される人類というテーマであるならなおさらですな。

一方のヴェテラン兵士側の代表はエルヴィン団長っすね。パッと見ィでは至って大人しそうな人ながら底が知れず、しかし兵たちからの信頼は厚い。確かにこのおっさんなら何かやってくれそうやな、ってな雰囲気を作り出すのに成功してますな。そんなキャラが門から出撃する時には激情とも言えそうな鬨の声と表情を表出する、ってのも効果高いと思う。上手いよね。あとリヴァイさんはミカサさんに個人的な恨みを買ってるみたいですが(エレンさんの処遇がらみで)、まァ・…これはお互い何とでもなるんじゃないかなって気がします。ならないかもしれんけど。

宇宙戦艦ヤマト2199・17話。まずはガミラスのゴタゴタ、ドメルさんは総統暗殺の濡れ衣着せられてさあ大変、と。どうやら首謀者はゼーリックのようですな。しかし若本のおっさん、こういう大時代的な芝居となると本当にハマることだなあ。部屋に入ってきて呵呵大笑してるだけでちょっとした絵になる。いい笑い声だよねえ。

んでもって本編はイスカンダルへの裏技コマンド入力、をダシにして真田さんと古代兄と新見女史について語るの巻。中原中也の詩集をギミックとして彼らの関係性、そして古代弟への思いをも編み上げるという…こっちもこっちで大時代的、っつーか実に和風な構成でありますな。命令に従うしかないのか、自分の考えで動くべきなのか。真田さんと沖田艦長はそれぞれ似たような懊悩を抱えており、古代弟もそんな「命令」の前に屈するのか…と思わせといての「水は中性子を通しにくいんだよ」は卑怯やよね。真田さんも結構お茶目である。いやマジで死んだかと思ったよワシ。ああいうシーンって潜水艦映画(ナディアでもいいけど)であったしさあ。あるいはここで旧作の半分サイボーグネタ出してくるのかなとか。

堅物極まりないと思われている真田さんだからこそ、古代弟が「兄さんが中原中也好きなんてしらなかった、もっと教えてほしかった」と訴えることにホロリと来ることだ。親友なりゃこそ知り合っている、兄弟でも知らないことってありますわなあ。…あと何だ、ハタチデコボコの新見さんがやたらかわいくてなんつーかもう。あんな時代があってその上で今のあの風情、ってのもまたヨロシイことですけどね! にしても、若者演技で一番「なんかムリしてんなー」ってな雰囲気だったのが古代兄の宮本充だったのはちと意外でしたよ。普通に得意なタイプのキャラなのにね。

有頂天家族・4話。五山送り火の夜、阿呆な狸どもは阿呆の人間の真似を楽しみつつ空を飛び浮かれ騒ぐ。酒の肴は天狗と狸の壮大なる阿呆話、彩に弁天様と少々の火力砲撃戦をあしらってどうぞご賞玩あれ。…というまあそんな話。

相変わらずリアリティとバカ話の配分が絶妙で、ワケ判んない魅力がある作品ではある。それは例えば奥座敷という舞台、そこに並べられた酒肴のディテイルの生っぽさと、茶釜に酒ブチ込み狸と天狗乗せて空を飛ぶという状況の地に足付かなさの対比である。清川元夢天狗さんの語る「偽如意ヶ岳事件」のお話がその白眉ですなあ。日本土着の道具立てとちょいと古風な語り口で、トールテイルのような底の抜けたホラ話を語る。なんとまあ現実感の薄い、そして現実的な手触りの時間であることか。

多分この夜この空間だからこそ、空飛ぶ船で狸同士の花火の撃ち合いをやらかしても理が通るのだろう。…面白くない人間は下を向いているのでこれに気付かず、上を向いてそれを見つけるような人間はただ面白がるのみ。いやはや、実に楽しい一幕でした。この浮かれ騒ぎにより矢三郎さんは哀れ弁天様の狸鍋となっちまうことが決定したワケであるが、こんなけ楽しけりゃまあそれは些細なことだ。ねえ矢三郎殿。ねえ。

あと何だ、赤玉先生が素直に座敷船に乗り込まず、いちいち芝居がかった「手続き」でもって面目を保ちつつやってくるシーンがエエわなあ。わーコイツめんどくせーという感じの先生とちゃんとそれに付き合ってあげる矢三郎の、いろいろあっての腐れ縁っぽい風情がよろし。