氷菓/もやしもん/夏雪

氷菓・19話。他愛ない会話から才能の話に移り、以前そこそこ懲りている奉太郎さんは自分の推論の才についてただただ否定する。意地の張り合いの果てに「丁度いい機会だ! 俺が頼りにならないと判らせてやる!」っちう境地に至る奉太郎さんがどうにも、素直じゃないかわいい。それを受けるちたんださんがまた、いちいちぷっぷく膨らんだりムダに近寄っては恥ずかしがったりとやたらにかわいい。最終的に「何で自分たちこんなことしてたんだっけ」で首ひねりあってるお二人さんがお互いかわいい。てことで、アニメ一話分二人でいちゃいちゃしてるという…なんだ先週と同じような話じゃないか。じゃそれでいいや。

話の基本ギミックは、一つの呼び出し放送だけを手がかりにその状況を延々と演繹推理してゆくという、実に持って回ったネタではある。とにかくまあ、実際に何かアクションを起こすわけでもなくずうっと理屈を転がしてるだけであり、しょっぱなのどうでもいいセッティングから結構重大な結論にまで達してしまう(でもそれがホンマかどうかはどうでもいい…翌朝の新聞はともかく)、実に正統派な安楽椅子探偵にしてリクツっこき話であってようやるわ、って感じ。読んだことないけど「九マイルは遠すぎる」って似たようなギミックの作品じゃなかったっけ。…その合間々々に上記のいちゃいちゃがありますんで、もう好いたようにしたらええねん、っちうね。うん、おもろかったよ。

もやしもんリターンズ・8話。アンニュイな長谷川研究員は過去の思い出にふけっている。回想シーンってのは現在の状況に不満のある人間が行うものであり、つまりそれは長谷川さんの結婚的状況がそのモヤモヤなのであるが、しかしそんな受身なヤリカタはデコボコ野郎二人組の言うとおり「らしくない」のである。よっしゃ判ったわい、ほたら「らしく」やったろやんけ、てことで長谷川さんはとうとうワインのビンに手を伸ばし…ってとこで次回に続く。うはあ、暗転した画面といい何ですな、ほとんどサスペンスモノの引きですわな。実際そーゆーことになりそうではありますが。

前期にもありましたが今期で二度目、タダヤスたち三バカ野郎による龍太さんディナーぶち壊しイヴェントである。いやあ、つくづくこのスノッブ兄さんにはこういう、ジトッとした状況からのちゃぶ台返しが似合いますな。せいぜいハデにちゃぶ台返しされたったらエエねん。

あとはフランス編におけるメインゲスト・マリーの登場ですね。気合の入ったフランス語操ったりちょっと幼いが芯の強そうなエエ演技したり、便利声優としての沢城さんの面目躍如である。しかしその、原作時から思ってたけど、「蛍に似てる」と言われても何だ、…ねえ。女性キャラみんな似てるようなもんだからねえ。言うても詮無いことやけども。

夏雪ランデブー・8話。立つ鳥あとを盛大引っ掻き回し、アツシ(中身は亮介)さんは去ってゆく。あらここでホンマに別れちゃうのか、と思ったらロッカさんもその後を追って旅に出るという、何かこれは、割と思わぬ方向にお話が進みだしましたな。ロッカさん結構アグレッシブ…というか、アツシさんの残してった花束見て「あれはあの時のもの」「これはこの記念日のもの」「忘れるワケない」とノータイムで判断してるとこ見るだに、この人も大概なキャラ持ってるわな。そんなけ両者の絆が深いということでもあろうが、ちと怖くもありますぜよ。

あとアツシさん、カネ下ろしつつ住んでる場所はなれて旅立っちゃうというとこまでくると、本格的に体乗っ取る気ィ満々に見えますよな。何というか悪霊のレベルに片足突っ込んでる感がある。現世に未練残して迷うて出てる時点で、まあ確かにめんどくさい存在ではあったのだけれども。

一方の亮介さんは引き続き、アツシさんの絵本メルヒェン世界にてじたばたしっぱなしである。この…なんだ、主人公の一人がここまで長期間にわたって別の世界/流れに隔離された状態で話が進行してゆくってのは、マンガというより小説の手法っぽい感じがするなと思った。少なくとも週刊や月刊の連載形式作品としてはそれほど多くない構造だよな。

絵本世界に囚われてこのままだと帰れなくなるよと言われる亮介さん。しかしそう警告してくる絵本ロッカさん自体もこの世界に属するものである。「姫を自由にしたいというのも王子(アツシさん)の本音の一つ」。この両義的な状況は、そのままアツシさんの心のありかたそのままなんだろう。亮介さんからすればそこに、現状況からの打破を可能にする光明がある、と言えるのだろうか。さてね。