氷菓/もやしもん/夏雪

氷菓・17話。カンヤ祭編のラスト。怪盗十文字事件の舞台が古典部となったおかげで部室内は大賑わい、にもかかわらず十文字さんは姿も見せずに目的を果たしてしまう。古典部含めた野次馬探偵諸君はアッサリ敗北、しかしまあ文集も売れたし古典部的には結果オーライやよね…ちうてたら実は全てを見通した奉太郎さんによる解題後の茶番でありました、っちうお話。相変わらず誰が負傷し死ぬ話でもないが、うむ、ミステリとしてなかなか満足感のあるシメだったのではなかろうか。

さて。ミステリの面から見た今回のアークの主役は確かに奉太郎さんで間違いない。手持ちの情報から確実に真実にいたる、割と正統派の安楽椅子探偵だったのではないかな。しかし彼は、ミステリのギミックを除いた物語の主題からは一歩下がった位置、というより、そのテーマを際立たせるための対蹠点に居る。それは「凡夫と才人」。そ、こないだの映画話で奉太郎さんが大いに翻弄されたあの主題である。里志さん言うところの「期待」という言葉に込められた、埋めがたい彼我の才能の差。里志さんはそのギャップに希望を折られ、河内先輩は一年前既に玉砕していたことを告白し、真犯人はこの事件にて自分の挫折を再確認させられ、そしてマヤカさんはそんな「凡夫」にさえ届かない自分の位置を苦く苦く噛みしめる。でもまー、それにしたって漫研内でのあの事件はマヤカさんへのとばっちりだよねえ。うん、もういいから漫研辞めちゃえ辞めちゃえ。

今回の一連のエピソードでエエなと思ったのはそのキャスティング。ゲストキャラ皆さん、どいつもこいつも結構な看板声優連れてきててギャラだけでもそこそこかかったんと違うやろか、って感じ。アレっすな、「伝奇ミステリ映画で岩下志麻出てきたらそらアンタが犯人やろ現象」を回避する(あるいはそのパロディと言った方がいいか)という感じっすかな。思えば同じ京アニハルヒでも、ミステリ回ではメタクソ豪華なキャスティングしてたっけ。社風っすか? 社風なんすか?

もやしもんリターンズ・6話。狂乱たる収穫祭は初日終了。というてもそれは表向き、ここからはお待ちかね「夜の収穫祭」の開始でありメインイヴェントでありなさけ むようのリアルバトルの開始である。正教授の座を賭けて四角いジャングルでフルコンバトルに挑む助教授だの、それを迎え撃つ空中コンボ標準装備の二脚歩行ロボだの、もうアンタらなんでもアリやな! これは確かに夜だからって寝てる場合じゃないのかもしれない。

そして自治寮方面でも夜のメインイヴェント。悲しい男の子たちが持ち寄った「お宝」をオークションするという悲しい秘密興行でありますが、ここでデコボコ先輩コンビの企みは花開くことになる。やっぱし口噛み酒がそのネタだけど、さらに一手間加えて「学祭参加のアイドルの唾液による酒ですよー」という…その、ねえ。エライよあんたら。結局フェイクでしたというオチも含め、もやしもん世界やなあ…。

その企みで得た資金が「長谷川研究員の居るフランスへ後輩どもを送り込む」ためのものだった、っちうのがまたエエよね。この美里と川浜のコンビ、ある意味で理想の先輩キャラだよなってのは学生生活してきた人にとっては同意いただけるところじゃないかなと思う。中途半端でヘタレだけどもヘンな所でバイタリティと才覚があり、そしてちゃんと同志/後輩に対しての視線をも持っている。居たよねえこういう先輩。…相変わらずその手法はアレ過ぎるけどな!

てことで樹教授の謎権力も含め、どうやら話の流れはフランスの長谷川さんに向かいつつある。アヤさんの言葉でもあったとおり、今の長谷川さんの立ち位置って囚われの「お姫様」なんだよね。本人はヤでしょうけれどもね。うん。

夏雪ランデブー・6話。ロッカさんは亮介さん(でも中身は旦那)のお背中を流したい、と所望する。この提案の時点で結構な生っぽさであり、何ちうかワシら凡夫には創作としてパッと思いつかない領域なんだけど、じゃいいけど下は脱ぐの? あと一緒にお風呂入るの? と畳み掛けられて逡巡してるとことか、もうかなりの生々しさではある。ちうかロッカさん、今までのパッと見ィはそこそこまともに見えて実は背中フェチで匂いフェチでしたとか、うーんこの人もなかなか曲者っぽい雰囲気がしてきたよ。などとまあそんなめんどくさげな現実世界をよそに、亮介さんの精神はいまだにメルヒェン世界でポエムっちい問答を繰り広げているのでありまして…っちうね。

まるで痛む虫歯をわざと責め苛むように、ロッカさんと自分(亮介さんの体)について厳しい質問を進めていくアツシ旦那。まあ、彼の気持ちも割と判らんでもないなあ、ってのが面白いところ。今回のイヴェントにおいては具体的な行為にまでは至らないんだけど、総体としての会話以降の関係性だのザンバラの髪形だの、このボディチェンジによってかなりな変化が生じてしまってますよね。これ、あとで亮介さんが元の体に戻ったとして、相当混乱するのではなかろうか。

いろいろ思うところができて亮介さん(やはり中身は旦那)に言い訳しちゃうロッカさんだけど、「シマオくん(旦那)が初恋で、ちゃんと付き合ったお相手ってのは彼が初めてで…」というそんなお話の結末が「てなワケであなたが好き」なのがまた、ワシごとき凡夫には思いつかない(ry。いまだに野郎のガキ的フィクション世界に浸かっているワシにとって、意外性の連続で面白ェなあ。