謎の彼女/ラグランジェ/峰不二子/人類は衰退しました

謎の彼女X・最終話。彼女と彼氏が墓参り、の巻。彼氏の亡き母親の墓参りに二人で臨むという、ちょっと象徴的なイヴェントでもって一旦の区切りとするってのはなかなか上手い。しかしこの作品が作品だからって、彼氏の母の墓前で唾液交換とはちょっとアレじゃねェかな、というコッチのツッコミにちゃんと応えてくれる卜部さんは空気の読める人である。「仕方がない、だって私たちはこれから先、もっと不謹慎なことをすることになるのだから」…だそうだ。うーん、椿さんが羨ましいので呪ってやろう。

それにしても上記の唾液交換だ。キスのようでもあり指輪交換っぽくもあり、なかなか不思議な儀式であって毎度ながらようこんなん思いつくわな。んでもって事前打ち合わせもなしにお互いに腕組んで指を口に入れるわ、椿の花はほころぶわ、二人で回りながら空に浮くわでもう、何やってんでしょうなこの人たちは。やっぱり羨ましいので呪ってやろう。うむ。

●総評。植芝理一作品のアニメ化、って確か以前一回もうやってんだよな。それについては知識不足のため言及しない。てことでえー、本作について。メカクレアンニュイ不思議ちゃんに出会った童貞主人公が、彼女の唾液をなめたり妄想したりハサミで切り刻まれたり妄想したりする話。というまあ、いかにも同作者らしいフェチ心にあふれる純愛モノである。純愛、ええ純愛です。

さて。まずは、独特のちょっと古臭い絵柄とこのハードルの高い設定を完全に保ったまま、よくもまあここまで「エエ話」としてアニメ化できたもんだと。いやそれでもあのやたら粘度の高そうな唾液描写は今でも「ちょっとどーかなー」と思わんでもないが、それでもね。

この題材にして、瑞々しくて繊細な雰囲気を出せたのはやはり丁寧な作画演出が大きいと思う。登場人物の心の動きに伴って軽やかに動く身体。あるいは明らかな感情とともに、ときには謎の雰囲気をまといつつ、様々なしぐさと間合いを見せる彼らの演技に何度も感心したものですよ。だからってただ端正なだけじゃなく、やたらにえろっちい卜部さんのボディラインだったり視線だったり、そういう甘いフェチも忘れない…っちうか、根幹にそのパトスがあってこその端正ですもんね。

あとはキャスティングよね。謎の彼女・卜部役の吉谷彩子さん。本業が俳優さんだというが、まさにそれらしい「声優っぽくなさ」は多大な存在感を与えていた。…よくこういう、声優っぽさを離れた演技をさして棒だの何だの言う人がいるが、ワシはそういう意見には与しかねるわな。少なくとも「棒」じゃないだろうに。適材に適所を配置すれば違和感も武器。無論、その違和感が最後まで違和感のまま残ってしまったらあんまし意味ないけどね。この作品の場合、お年頃の野郎から見た女の子のワケ判んなさ加減を出す上で、ある意味「定番で王道」のキャスティングでさえあったと思うよ。

監督の渡辺歩は本作と、あと同時にやってる宇宙家族でその名前を覚えたのだけれど、実に手堅くてベタの上手い人だってのは判った。長いことシンエイで原画と演出と監督をやってきた人のようですが、そう言われてみれば確かに…そうねえ、一種の健全さが感じられるのよね。その健全さが、この作品のピーキーなセッティングをして暴走させなかったのかもしれない。無論一作二作で全てを判断できるワケも無く、そのうちすさまじく不健全なアニメを作ってくださるかもしれませんけども。それはそれで。

てことで、なかなか興味深く見させていただきました。満足です。

●新番組、と言うていいのかどうか。輪廻のラグランジェ season2。第二期の幕開け…というよりは二期開始前の紹介話、つまりは前期の総集編ですな。能登姉さんに金元会長、そして田所指令の視線から語られる前作の事件、と田所指令の迫害譚である。やっぱ苦労してんなーおっさん。

てことで総集編だし特に何がどうってことは無いけど、こうしてまとめて下さるのはありがたい。…世の評判はあまり良くなかったらしいし、ワシも諸手を上げて大絶賛というワケでもない作品だが、やっぱねえ。どうしても憎めない、というか結構好きなのよねえ。しかしその何だ、ワシがこの作品のエエトコやと思っていた要素は、総集編のようなまとめからはこぼれ落ちてしまうのだな、とか思った。個人的にはそれが悪いことだとはあまり思わない(枝葉末節偏重でもエエやないの)けれど、世間的にはウケ悪いかもしれんわなあ。

てことで、視聴はさせていただきますが、まァ…次回の実質上の第一話待ちやな。うん。

●新番組・LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜。言うまでもなくのあの作品の新作である。冒頭から濃厚に初代アニメ以前、原作マンガのテイストを感じさせるような全体演出で、話運びも演出も昭和っぽいスタイリッシュさがあってよろしいね。「グリーンジャケットを着てベンツに乗るルパン」が、過去回想やオマージュ以外の本編として出てくるっちうのはやはり感慨深い。不二子とルパンという少人数に焦点を当ててるからか、後半の逆転また逆転がちとシツコいかなとも思ったが、まァ初回の「こういうノリで行きます」ってなプレゼンとしては悪くないか。

てことで、ルパンのスピンオフというよりは主役の重心をすこし変えてのリメイク、といった風情の作品。多分、ここしばらくの多くのクリエイターたちもこういうオトナっぽいテイストを目論んできたのだろうが、様々な事情…スポンサーや局の意向など…から成立し得なかったのだろう。そのくらいルパンというコンテンツ(ヤな単語だね)には色んなカセが付いちまったのだ。深夜という限定枠、40周年記念というキッカケなどがあって、今やっと成立したってとこだろうか。

メインキャストはどなたもエエ雰囲気。沢城姉さんの芸達者はともかく、ルパン役者としてのクリカンの演技プランがかなりシヴくて結構感心した。「クリビツテンギョウイタオドロ、だぜ」の言い方とかなかなかよろしかったね。スタッフは山本沙代監督・岡田麿里脚本・小池健キャラデザ/作監という、何だかフシギな取り合わせ。今んとこ皆さん頑張ったはんなあという印象ですが、特に岡田脚本が今後どう転んでいくかってのが注目どころでしょうかね。あとこの絵のクォリティを保っていくのも大変だと思うが、とまれ視聴継続してみよう。

●新番組・人類は衰退しました。タイトル通りに人類の黄昏時期を描いた作品のようだが、しかしその風景は錆と瓦礫のディストピアではなく、あくまで牧歌的で明るいパステルカラーの世界である。穏やかな情景の中で緩慢な終焉を迎える世界、ってのはなかなかソソるものがありますな。今んとこその衰退ぶりは登場人物の言葉の中にちらほらと出てくる程度だけど、そのうち「…うん、なるほど…」てな感想をもたらすような絵も出てくるんだろなあ。

終わりゆく人類の対照位置に居るのが「妖精さん」たち。手のひらサイズのちっこい見た目もちょっと舌っ足らずな言動も名前そのまんまなのだが、彼らこそがこれからの世界の主権種族ということらしい。見た目に反して非常に高い科学技術能力を持っているようだが…さてね。んでもって名無しの主人公(ちうかこの話、ほとんど名前らしい名前持ったキャラが無いのね)の職業は国連所属の調停官、ってことは人間・妖精さん間の交流を円滑にするのがお仕事ってとこですかね。それほど人間に悪意も何もなさそうな妖精さんたちだけど、そこはやはり別種の存在、どこかその精神と行動に人と相容れないものがあったりするんだろうか。その辺はいろいろお話になりそうやなあ。

ふむ。設定と舞台は面白そうなので、しばらくお付き合いしてみよう。最終的にものすごダウナーな結末になってもよし、余韻含んだ「エエ話」で終わるもよし、やね。

●…さて、この地域のこの曜日はとにかくまた、多い! 録画諦めた作品もあるし、これから諦めんならんかもしれない。参ったなこりゃ。