氷菓/坂道のアポロン/つり球

氷菓・9話。未完成のミステリ映画の結末をでっち上げるため、奉太郎さんご一統は関係者三人の証言を当たることになる。てったってやることは「自分はこういう結末がエエと思う」っちう程度のお話であり、元がフィクションで実際の事件ですらないので、今までにもまして論理と妥当性の純粋さが強調されたシチュではある。…ま、そんな要素だけでオチが済むとは思いませんけどね。ええ。

てことで、その候補三人さん。脳筋の助監督・ミステリオタの小道具・チャラいミーハーの広報、とバラエティに富んでて面白いね。(名目上は)正解ってものが無い状況だけに、みんながある程度納得できればそれで良いのであるが、当然ながらこの三人のプランはどれも帯長襷短であってキレイに合致はしない、と。まァ奉太郎さんも言うてたけど、中では三人目の広報姉ちゃんのネタが一番おもろいよね。導入と展開はオーソドックスな推理ミステリやっといて、クライマックスは殺人狂の怪人が出てきてムチャクチャやる、という。実際の商業映画とかでもネタとして充分アリなツイストですわな。前者二例と違って矛盾点は「用意された血糊の量が少なかった」という、実際の画面上のエラーではないだけに余計有望である。も、これでエエやんこれで! オペラ座とかじゃなく、いっそ13金とかフレディみたいなゴアキャラな方向性でどや! ウケるでェ!

今回のちたんださんはウィスキーボンボンかっ喰らって酔っ払ってるだけのお仕事。自分で持ってきて自分であらかた消費しちゃって、最後ふらっふらになってぶっ倒れるという…なんつーか、いつにもましてぽんこつお嬢さまだな! ま、そんな最中の一言がなにやら伏線となってるくさいのではありますけれども、そんなんはともかく、話の合間々々にボンボンをもくもく食べつつ包装紙を折り折りしてる姿がマスコット的にかわいかった。…この作品、タバコも酒もネタとしてオッケーなのね。

坂道のアポロン・10話。今回も割といろんなエピソードが複合していて、大きく「これ」という要素を抽出しにくい。ガチャガチャとした雑多さや詰め込み具合はそれほど感じられないので、アニメへのアダプテーションに苦心しているのはよう判るけど、一話分としてのざっとした主題が薄いのはちと不利な要素ではあるよな。…やっぱこれ、1クールにしても話数の多くないノイタミナでやんなきゃなんなかったのが苦労の始まりではなかっただろうかね。

ま、とりあえずの大きな要素はボンとりっちゃんの間柄についてである。行きつ戻りつ少しずつ、このオクテなペアの距離は狭まってゆくのだけれど…それにしても、いちいちボンがめんどくさいな! 改めて人付き合いに困難を抱えたお人でしたねってのを思い出させてくれることだ。些細なことからの八つ当たりにせよ勝手に思い込んで身を引く態度にせよ、女々しいというよりは「ちょっと古い作品のヒロイン」のような。…そういや今回の風呂場のシーンも覗かれる側でしたなあ。逆ラッキースケベ男。

最後の年の文化祭、ロック側からの挑戦を受けて盛り上がるお二人のあとに来る「父」の陰。なんかかんか更生したらしき千太郎のお父んが戻ってくるのに対応して、何故か千太郎自身の退場が示唆されているけれど…はて。

つり球・10話。江ノ島の危機に際して続々と集まってくる主人公たちご一派である。高校生身分ではできることにも限界があるだろう、っちう辺りを補完してくれるのがハタチ越えにして秘密結社所属のアキラさん。うん、この人のこっち側への寝返りが無かったらお話の進行にかなりの支障を来たしたことでしょうねえ。…要するに「便利キャラ」と言えんこともないが、まあそれはそれで。

強制旅行先から駆けつけるユキさんも確認できて、残るはハルさんだけである。「何とかしなくちゃ」と思いつつもどうしてよいか途方にくれるハルさんにカツを入れて立ち直らせるユキさんたちの存在は、そのまんま友達としての間柄。古川の爺さんによる伝承を待つまでもなく、この作品のテーマである「友」がここで全面に押し出されてくるワケで。友で釣り…友釣り? 関係ないっすね。とかなんとか言ってたらラストにかなりショッキングなネタを仕込んできて、ああラス前だなあって印象であるな。アスロックまで持ってんのね、ダックさんたち。

とまあ、今回はクライマックスであり人情友情話Withインパクトのあるヒキ、という大盤振る舞いであるな。見た目は奇抜だけど物語の内容は結構ベタなことが多い、中村監督らしいお話だったような気がする。そういう意味で後半のハルとユキの会話シーンは今回の肝、あのビンタの前後がヘソだろうな。演技も作画も、瞬間的にボルテージが上がってて「話の転向点」としてよく機能していた。