未来日記/坂道のアポロン/つり球/ヨルムンガンド

未来日記・最終話。この切羽詰った状況下において、ユノさんは別世界線の自分との対峙/ユッキーは精神世界にての自問自答、各々のシーケンスを経て最終的な結論を出す。その過程で背中を後押しするのが双方共に親だってのはまあ、アリネタとはいえ興味深いかな。こういうアニメとかだとよく親の存在は無視軽視の対象だったりするからねえ。


ユッキーの覚醒によって世界線は大きく変更してゆく。今までの物語がちゃんと連鎖してて、最初のドミノを倒すか倒さないかで情勢がバババッと良い方向に向かう、というご都合物語がエエ感じやなあ。物語の最後で今までの要素を回顧するってのは感慨深くもありますしね。ユノとユッキー、二人の関係性にちゃんとけじめつけて物語を終えてるのもなかなかよし。…結局、最後までユノさんの異常な強さは「そういう子だから」っちう感じだったのは笑いましたけど。うん、そういう子だよね。しょうがないよね。


最後の最後、なんかオープンエンドっぽくエピローグくっつけてましたけど…あっこからまた別の作品、OVAとか映画とかに繋げんのかしらね。個人的には蛇足っぽいような気がしたけどね。まいいや。


●総評。ワンギミックによるコンゲームバトルロワイアル作品。昔から無いジャンルではないが、やっぱしデスノートがこの手の作品の中興の祖なんだろうな。とまれ、こういう「お話の論理的な流れ」が重要なアニメは、事前に原作があって熟慮再構築できるってのが大きなアドバンテージじゃよね。オリジナルと原作つきそれぞれ利点欠点はあるが、この作品においては原作の存在が「展開の濃さと稠密性」っちう形でエエ方にでた印象がある。原作読んでないから憶測ですけどね。


これも原作の持ち味なのだろう、なかなかキャッチーなキャラデザインと結構な頻度でブッ込まれるスカシギャグ風味がよい味付けになっている。この辺を廃してストイックに構築してもそれはそれで興味深い作品になったと思うけれど、もうこういうサイドディッシュが無いと「未来日記」じゃないな、ってくらいには作品カラーとして血肉になってるものね。


上記のキャッチーなキャラに関してはアニメ化においてさらに意図的で、フレッシュ性を重視した主役二人以外にはすごく演技達者な…見ようによっては「ベタな」キャスティングをいくつか盛り込み、視聴者が話を追っかけることへの障害を極力減らしているような印象を受けた。お犬様編の謎少年=石田彰、ボーイッシュ関西弁=松岡由貴、ですわお嬢様=ゆかな、という辺りが真骨頂。何というか見事すぎてほとんど自家パロディに近いぞ。


あとはまあ…当然ながら、ヒロインたるユノさんの強烈な粘着ストーカー性よね。なまじ作中最強クラスの戦闘能力を持ってんのが最兇に怖い。視聴してって彼女のバックボーンが明らかになってゆくことである程度の「普遍性」も付与はされるんだけど…まあ世の中には限度っちうもんがありますわな。未来日記というシステムではなく、このユノさんのキャラを配したことが本作制作時の一番のキモだったのかもしれない。


ただ、クライマックスに向けて世界崩壊的な大枠物語になってったのは良し悪しというか。純粋なコンゲーム構造だけで勝負するって方がワシは好みなのでね。面白くないわけじゃないが、ちょっと苦し紛れ感というか、「物語を盛り上げるためにはこうしときゃエエやろ」っちう雰囲気が見え隠れしちゃうからなあ。ま、これは個人的な好みなので。


てことで、楽しく視聴させていただきました。後半ちょっと足取りがヨロけたかしらっちう印象もあったが、おもろかったっす。続編は実写については…ま、それはいいか。あとみねねさんが好きです。いいと思います。以上。


●新番組・坂道のアポロン。アフロじゃない方のナベシン渡辺信一郎菅野よう子のタッグというとカウビバ以来でしょうか。渡辺さんに限っても帯アニメの監督としてはチャンプルーからだから大概久々。さて本編はマンガ原作のセイシュンアニメ、都会者で中二こじらせ気味のメガネくんとバンチョーっぽい豪快さんとしっかりものいいんちょお嬢さんが、ジャズで繋がってあれこれやるっちう話…かしらね。番長とかレコードとか校舎の雰囲気とか妙にレトロっちいなと思ったらこれ1960代なのか。なるへそ。


えー、うん、非常に手堅く落ち着いていて情感的で、いかにもこれはノイタミナっちう雰囲気やなあ。結城信輝によるキャラもイヤミなくまとまってて目に優しいし、かつよく動く。日常芝居もさりながら、後半部分に入ってくるドラムシーンの気合の入りぶりがすごかったなあ。ロトスコープもどきの手法を使ってんのかしらね。


身を寄せている親戚のお家の人たちがすごくクズっちかったり、学校での人間関係にも火種があったりと不穏な材料はありながらも、タテセン入った表情などの少し軽めな演出を差し挟んでくることでそこまで重い雰囲気にはなってないのはありがたい。いや、今後どうなるかは判らんですけどね。


てことで、えー、これは気になるので継続してみよう。


●新番組・つり球。中村健二監督の新作アニメ。ホンマに何もよう知らん状態で見はじめたのだが…ははあ、釣りがテーマで地球を救うから「つり球」なのか。もうこの段階で結構な変化球なのだが、フラット気味なヴィジュアルスタイルといい「テンパると地上で溺れる主人公」「金魚鉢頭に乗せた自称宇宙人少年」「いんどじん」というキャラの取り合わせといい、なんつーか実に中村監督らしい素直じゃなさがバッシバシで、同時に「この作品一体どうなるの」というツカミとしてはかなり優秀であるなあ、とか。


さて。主役のユキ少年は人付き合い苦手なパニック少年であり、もどかしくも悲しくてそこはなんか共感してしまう。脇に居ったら鬱陶しいだろうし、自分がその状況ならという気分も判るしね。そんなコミュニケーションに問題のあるユキさんとつるむ事になったのが、不思議ちゃん極まりない宇宙人と万年苦虫噛み潰し男だってのがまた、よりによってというか何というか。これからの展開が不安でもあり面白そうでもあります。


上記の通りヴィジュアルの特異さは毎度のクォリティ。なんつーか80年代っつーか、鈴木英人みたいなBGが目を引くな。あと橋本敬史が「エヘクト」アニメーションの肩書きで参加。あー…水の表現は確かに確かに、である。ナレーションに古川登志夫、主人公のハッチャケ祖母に平野文という、こないだもたまゆらで見かけたうる星コンビだが、金魚の人がだっちゃだっちゃ言うてんのはそのオマージュだろうな。あと釣具店のお嬢さんが富永みーなってのもなんかすげえ。


てことでこちらも問題無く継続してみる。にしてもノイタミナ二階建て、どっちもコミュ障っぽい少年が転校してきてトラブルに…という導入構図になっちゃったのは偶然なんだろうなあ。


ヨルムンガンド・2話。えー、講談・武器商人の日常。そこらで今にも火のつきそうな辺境の戦場にて、各々の思惑を時に軽く時に重く、しかし常にお命を天秤に乗っけつつ突っつき合わせている剣呑な人々のご一席である。ワシは武器商人だの山岳兵だのの実体なんか知らないにも程があるのだが、こうして描写を積み重ねられると「ほほー、これは面白いものだ」と喜んでしまうものである。講釈師見てきたような何とやら。…埃と汚れの最前線で、真っ白けっけなココ姉さんという絵面は良いハッタリやねえ。


そして相変わらずご一統の気楽さ気安さが面白い。「面倒なのでズラかるよ」のハンドサインに「おー」つってるお仲間に微笑む。いつ死んでもおかしくないお仕事の割に、あるいはそれだからこそのドライな信頼感がプロっぽい雰囲気ですな。いや、ホンマがどうとか知らんよ。でもこういうお仕事エキスパートキャラってのは不快感が少ないよね。お話のジャンル上、いつかは誰かが死んでしまいそうな状況なのはちと物悲しくもあるが。それでもココ姉さんは笑みを浮かべているのだろうか。


宝亀声の商売敵さんとそのご一派はまた出てくるのかしら。なんか面白いキャラだし、再登場してくれるとエエけどな。あと今回もハインド見かけてわざわざ「ミル24V」とかカタバン言うたりしてんのが武器オタ心満たすというか何というか。おかげでよう知らん代物出てきても検索しやすくてとてもありがたいです。ありがとう。