若い二人とおっさんのワシ

●てことで、半月に及ぶ狂乱の繁忙状態はとりあえず一段落。今後しばらくは割と平常運転に戻るのである。ここ数日の睡眠時間の絶対的な欠乏状態を噛みしめつつ、ああもう知らんワシャ知らんと思いつつ自宅への道を歩んでいたのが数時間前のワシである。


駅前の商店街は人が多い。ふらふら歩いてたらファストフード店の前で若い男女が会話しているのが聞こえてくる。「もう知らないから、こっちのことはほっといて」「そんなん言うなや」「いやマジでほっといて」ははあ痴話喧嘩。あのイカついお兄さんはこのチャラいお嬢さんにふられつつあるようだ。ま、それも人生、セラヴィ。


などと思いつつ十メートルほど進んだら後ろの方から「うおおおおお」と鬨の声が上がる。振り返ると件の兄ちゃん、荒ぶり猛って周囲のもの手当たり次第に蹴りを入れている。ファストフード店前の自転車。店の看板。電柱。そしてまたウォークライ。…彼らの道向かいには違法駐輪の取締りで警官さんが三人ほど居てて、その声聞いておっとり刀で駆けつける。あっという間に出来上がる物見衆の人垣。叫び続ける兄ちゃん。お嬢さんの方はもはや人垣の向こうでよく見えない。


多分あの兄ちゃん、警官が居てんの確認してから暴れだしたんやろな。暴れて取り押さえられて大ごとになったらとにかくあのコも考え直すだろう、と切羽詰ってワケ判らん思考回路になって。いやあそれも若さだねえ…なんてことはツユも思わず、わあ怖いぜ恐ろしいぜ関わり合いにならないようにしよう、とそそくさ帰ってきたのがこのワシだ。だってワシにはさっさと帰宅して溜まったアニメ見なきゃならんという神聖な目的があるんだからね。若いパワーの発露なんぞに構ってはいられない。はー桑原桑原。


…でも、ま、生涯いっぺんくらいはあんなドラマの一シーンみたいな行動してみたいような気がせんでもない。ごめんうそ。絶対「この自転車蹴ったら困る人居るやろなあ」とか要らんこと考えちゃうわ。ごめんうそ。「これ蹴ったらワシ足痛めるやろなあ」でした。