無駄な備蓄という姿をした安寧

●物事をいい加減に済ませてピンチになりやすい一方、ある面では過度に安全策を取るタイプの人間である。具体的に言えば過度の備蓄をしてしまう。無論それは理性や計画に基づいた溜め込みではなく、「なんか不安だから」という無根拠な感情によるものである。めんどうなことに、その傾向はどんどんと程度を増してゆきがちである。


●電車での通勤にプリペイド式のフェリカカード(ICOCA)を使っており、毎回五千円ずつチャージする。最初の頃は五千円が無くなりかけてからチャージしていたのだが、一度思わぬ遠出をして危なく使い切ってしまいそうになったので(そうなったって普通に切符買やエエのだが)、用心のため…というより「まだ大丈夫だ」という心の安寧のために二回分、つまり残り五千円になったら五千円を足す、という状況にしている。


ところがここでいつもの無駄な不安心が顔を出すのである。「残り五千円になったらチャージしよう」と決めていると、六千円台になった辺りでなにやらソワソワし始める。そろそろチャージしとかないとな。いや待てよ明日明後日と用事があってチャージできないかもしれないじゃないか。そうなると残り五千円を切ってしまう。いかんこれはまずい、ちょっと早いがここはさっさと五千円チャージしておくべきではなかろうか…と。かくてチャージ目安は残高六千円付近に更新される。そうしてしばらく経つと七千円切るとモジモジし始めて…以下同様。現在のチャージ基準目安は八千円である。一万円の大台を超えるのもそう遠くない未来であろう。我ながら何かこう、小さい人間だなと思ったりする。


●こないだ駅の改札出口で、三人ほど前のおじさんがカードかざした時にエラー出していた。表示を見て言うに「あれ、いやーカネ切れとったわ。駅員さんこれどこでカネ入れたらエエの? あああっちの乗り越し精算機ね。おおきに」と。


…うん、ああいう人物にちょっとなりたい。憬れるのである。