えん魔くん/まどかマギカ

Dororonえん魔くん メ〜ラめら・3話。チーコ先生の変貌は妖怪「怒黒」によるものだった。怒黒は生贄とする者にとり憑き、その体にドクロのあざを刻んで三日後に餌食とする。えん魔くんたちはチーコ先生を救うため、雪子姫を囮に立てて怒黒に立ち向かうのであった…という話、なんだけどさ。そりゃお話の目的がえろえろ描写で、前提条件も舞台設定もえろのための言い訳でちっともかまわないけどさ。仕込みも囮もぜーんぶ何の関係も無く、ただ女の子たちがキャッキャウフフしてるだけでも充分オッケーだけどさ。…そんなことしてるうちにいつの間にかエンディングとスタッフロールが流れ、妖怪退治ガン無視で終わってしまうというノリはなかなかバカ過ぎた。


なんか他の感想見てたら原作再現という文字があったりした。マジか。確かに永井御大ならやりそーな気もするが、それをちゃんとアニメでやっちゃう方もやっちゃう方だ。相変わらずギャグのノリはイマイチ良くないんだけど、今回に限ってはこのリビドー最優先なバカ構造で許した。つーか何だ、家弓家正さんもすんませんねえ。あと一応残り2分で申し訳程度の怒黒ヤッツケシーンはあったけど、アレが無かったらもっと良かったなー。そういうワケにもいかんか。


魔法少女まどか☆マギカ・11話と12話まとめての最終回。思わぬ形で注目を浴びてしまった本作だけれど、そらまああんな宙ぶらりんな状況でほっとかれたらこっちとしてもどないもしゃァないですわな。いやあうん、待たされた分に相応しい量感とハクリキを持ったクライマックスだったと思う。2話同時放送ということもこのガッツリとした量感に寄与した原因ではあるか。てことでやっとの放送、ここに魔法少女の戦いは終わりを告げ…そして新たな戦いの日々が始まる。


まどかただ一人を救うために何度も何度も地獄を繰り返してきたほむらさん、その繰り返し自体がまどかに破滅をもたらすものであったという皮肉。そしてさらにその皮肉をひっくり返し、キュゥべえも思いつかなかったたった一つの冴えたやりかたに繋げるという流れ。過去と未来と全ての世界の魔女を生まれる前の姿に…かくてまどかは無限の聖女となり世界に遍在する。宇宙の基本的構造からリコンストラクションするという、思いのほかガチSFテイストも盛り込んできたのでワシ的に喜び多し。そこまで強大な荒事ができるなら、宇宙熱的死をもちょちょいとひっくり返しちゃっても…ってのはムリか。まいいや。


余裕をたっぷりと取って語られるエピローグもまた良し。でもさやかさんは消えてしまうのは確定しちゃったのだなあ。想像も付かないまどかの変化やほむらの苦難より、さやかのこの…言ってしまえば「小さな悲しみ」の方が割とリアルに感情移入できちゃったりしてね。何というか、寅さん的なアレでね。


●総評。今様魔法少女残酷物語。ワシの少ない地識でも、意外とこのジャンルって過去作品に生々しい残酷ネタとかあったりしたらしいとは聞きますけれど…ここまでガッツリと、それを主題のように扱った作品ってのはそうそう無かったのでは、と思ったりする。聞けばこのテイスト、脚本の虚淵さんの志向によるところ大らしいそうで。ワシはそっち方面の経験は実に薄いので知らなかったのですが、いやあ、イッパツで覚えてしまうだけのインパクトだったな。うむ。


蒼樹うめのファンシィなキャラ、岸田隆宏を筆頭としたゴッツい作画陣、新房監督らしいスタイリッシュな演出、梶原音楽にイヌカレーデザイン、そしてあの脚本。一見「こんなもん混ぜてエエのんか」という材料群なのに、ふた開けてみれば描くべき方針に一切のブレがない、実に合目的的なスタッフの揃え方してたんだなあ、と後付け感想で思ったりする。…なんか初期には虚淵さんのフェイク発言によるミスリードネタがあったそうだが、いやいや…1話の段階で既に少々不穏な雰囲気がもりもりだったもんねえ。鍍金でも隠し切れない地金(!)が透けて見えちゃうというか。無論、ここまで針の振り切ったシロモノになるとは思っていなかったけれども。ええ。


とにかくまあ、こんな作品つくって世間のアニメ野郎どもの度肝抜いたろ、っちうシカケは大いに奏功したんと違いますかねえ。視聴側のインパクトを最大効果で提示するための下準備、料理技術、腕力がスゲかった。うん、近年としてはかなり上位のエンタテイメントパワーな作品だったと思いますよ。そらこんだけ耳目集めるわな、と思う。


タイトルとして挙げられており、当然ながら主役だと思われたまどかさんがどんどんと後景化してゆき、これってホンマはほむらさんの物語であったのですよと判る…っちう構造が面白い。ほむらさんの能力はやり直しリセットであり、実際別の歴史ではまどかさんはちゃんと主役的活躍をしているのよね。ある意味でほむらさんはその能力により主役を乗っ取った…乗っ取りと言う表現がアレなら、主役を救う為に作品の目的を書き換えた、と見ることも出来るでしょうか。んでもって最終的に、あまりにも強大な力を持ってしまったまどかさんが、その力もて宇宙の法則を…作品構造自体をさらに書き換えた。前景に出て主役となるのではなく、舞台そのものとして遍在するに至ったと。うん、自分で言うててワケが判らないよ。まいいや。


基本的にワシの担当外のジャンルなんだけど、そんなん言うてもしょうがない位のクォリティ持った作品だったと思います。実際楽しんだしねえ。…しかしまあ、放映中に未曾有の大事件が発生し、それによって(放送的に)困ったり(制作的に)助かったりして、まあそんな所でも話題になったりして、いろいろと曰くのある作品になっちゃいました。うん、まあ、そこら辺含めて目の離せない作品だったなあと。そんなシメ? うん。