鷲は舞い降りた

●ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」読了。言わずと知れた大ベストセラー、この手のジャンルに疎っちいワタシでもタイトルはよう知ってる本である。売れる本が売れるには売れる理由があるだろうし、きっと面白いに違いない…という期待もて買ったのだが、その期待は裏切られなかったっす。めっさおもろかったっすわ。


「歴史の謎を取材に行ったら更にでかい謎があったのよ」っちうフェイクドキュメンタリなプロローグからして既に面白い。イギリスの片田舎に眠るドイツ落下傘部隊の墓、それに触れられたくない住民たち。ツカミはバッチリ。とにかくオーバーケレン味と地道で精度の高いディテイルのバランスがすばらしく、「見てきたような嘘をつき」の楽しさに溢れてますのな。


そして立ちに立ちまくったキャラですわ。どいつもこいつも魅力的(そ、戦闘バカな無能アメ公将校のシャフトゥ大佐でさえも、だ)であり、いちいちの台詞と行動が実にかっちょええ。ワイズクラックってェんですか? 日本人には似合わん当意即妙で皮肉満載な応酬にワクワクしやすわい。


しかし主要メンツ、プロフェッショナルなれど底の所で皆さんロマンチストかつちょっと甘いのがよろしいな。シュタイナ少佐はユダヤ人逃亡の幇助で譴責・懲罰大隊入りの状況、デヴリンさんはここぞってェとこでテメエの娘ほども歳の離れた田舎娘にほだされてしまう。ダブル主役の双方ともこれだ。何より、彼らの大作戦が綻びかけるキッカケってのが「溺れた子供を救ったら正体ばれた」ですもんな。んー、甘い。良い。


てことで門外漢のワタシでも「こりゃウケるわい」と感心しました。いや、門外漢だからこそ免疫無くて入れあげられたのかもな。とりあえずかなり後になって出た続編とやらも読んでみたいし、あー、映画も見てみたいな。うん。


●蛇足。この話の枕として語られてる例のスコルツェニィによるムソリーニ救出作戦。ワタシが最初に知ったのは「マカロニほうれん荘」 によってだったなあ。一話丸々使って軍事挿話のギャグ話…今のマンガ家でこういう芸風を持ってる人はちょっと思い当たらない。驚異的な跳躍力によって連合国に恐れられたトシちゃんスコルツェニィ、とかねえ。こないだ帰省したときに実家の単行本で久しぶりに読んだんだけど、シュトルヒで離陸直前に兵隊さんみんなで引っ張ってる絵とか、細かいディテイルが楽しいなあ。当時何のこっちゃ判らんかったですよ。