FBI

●ウィリアム・サリバン&ビル・ブラウン「FBI 独裁者フーバー長官」読了。ワタシにとって知ってるつもりで割と疎っちい分野のお話なので、そこそこ楽しくお読みいたしました。FBIにてNo.2まで上り詰めた後に蹴り出されたサリバンさんと、その経験をまとめたブラウンさんが著者。アチシですらフーバーさんがどういった評価を(当時、あるいは後世)受けていたかくらいは知ってはいたが、いやあ…これはなんつーか、サリバンさんの恨み辛み怒り歯噛みが凝り固まったような本でありましてなんかすげえ。


当然ながらこれはサリバン側からの一面的な視点であり、客観的な視点(そんなものがあればだが)から見て不当な評価も多々あるのだろうとは思う。でもまあ、そういう「真実はどこだ?」てなことはワキに措いとくとですね、この本の中における「フーバー」というキャラは実にオッケーですよ? 小心者で尊大で自己顕示欲の塊で官僚主義で現場軽視主義で強きを助け弱きをくじく。つまり無能。何だこのステキ上司。サリバンの偏見や誇張がないとここまでの完璧超人にはならんと思うし、ただのバカ無能がFBIなんてものをここまで肥大化させたとも考えづらいけど、んまあ一面ではそういうトコもあったんだろうな。


それにこの本、サリバンさんの怨嗟や無念さが結構出ててそういうトコもなんか面白いんだすよ。「チャパキディック事件の捜査はホワイトハウスからの命令であったが、フーバー自身もこれを望んでいた」てな記述があるんだけど、何故かこれが微妙に違う表現で二度繰り返されている。別に「大事なことなので二度言いました」てなワケでもなさそうなのがねえ。多分よほど腹に据えかねてたんでワチャったのだろう。生々しいねえ。


てなワケで、ワタシはこの本を「ようできた企業内幕フィクション」として読んだのでした。創作物として読むとあまりにもスジが無さすぎるけど、その分細かいディテイルがヤケにリアルで楽しいのでそれはまあそれで。


…ま、当事者であった著者やフーバーや職員、あるいは当時の米国民さんたちにとってはそうそうお気楽な見方はでけへんかったやろけどね。これ、映画化されてないのかな。FBIが許さんか?