●マイクル・カンデル「キャプテン・ジャック・ゾディアック」読了。古本屋で見かけて、半分ほどは大森望と横山えいじの名前で買っちゃったようなとこがあるのだが…って、ああこの作者は「図書館のドラゴン」の人じゃないか。ならば素敵にひねくれたSFに違いないああそうに違いない。これは楽しみだ、と思いましてね。
んでまあ、その期待はほぼ裏切られなかった。ぶち込まれたSF的ガジェットやアイデアの量もともかく、それらをものすげえ勢いで相対化・無価値化してしょーもないバカギャグにしてしまう手際の見事さにはホトホト感心してしまいますよな。未来だかどこだかの米国、カクセンソーは起こるわ悪霊は襲い掛かるわスーパーヒーローは出るわのカオス世界がその舞台。基本的にはクリフォードなる(この世界においては)古風な男の、幸せな家庭を追い求める旅路がメインの筋…なんですが、まあよく判りません。
個人的には作品中に頻出する「死後の世界」が好きだなあ。現世とあんまり変わらないが、世界の色や雰囲気がなんかうすら寂れているのね。んで高カロリー食摂ったり銃で撃たれたりするとやっぱしそこでも死んじゃう。そしたら更に灰色じみてカスカスな「冥界2」へと落ちる。以下同様。あー、ワシこっちのダメ世界のほうが性に合ってるかもしれん。…まてよ、とするとこの現世もアレか? 別世界にとっての冥界だったりするのか? そこはさぞかしヴィヴィッドでパワー溢れる世界なんだろうなあ。…めんどくせ。
オチは幸せっぽくもあるが薄っぺらな皮肉も感じられて、何となく英国っぽいブラックさが感じられるような気がするが、まァ皮肉があれば何でも英国風に感じるワシの感性がダメなのでそれはどうでもいいです。ちうか「図書館のドラゴン」も読み返したくなってきたな。例によってほぼ忘れてるしなあ…えーと、どこにしまったっけなあ。